ドナルド・キーン「著作集第4巻 想い出の作家たち」を読みました。
630ページもの大著です。
読み終えるのに骨が折れ、一ヶ月近くかかってやっと読み終えました。
キーンさんは23歳で来日し、日本文学評論家として活躍し、東日本震災後に日本に帰化しました。
日本文化や文学の海外への紹介や評論活動の功績により文化勲章を受けています。
昨年、96歳で亡くなりました。
膨大、旺盛な評論活動、日本人作家たちとの幅広い交流もよく知られています。
この巻では文壇交遊録、作家論、作品論が含まれています。
戦後ほどなくして来日したキーンさんは、明治生まれの谷崎潤一郎、永井荷風、川端康成たちと会って対談交流をしています。
戦後に活躍した同次代の作家たち、三島由紀夫、安部公房、司馬遼太郎とは交流が深く、特に三島由紀夫との付き合いは三島事件の起こった年まで続きました。
この巻でも三島に関するページ数が一番多いです。
キーンさんが最も評価していた近代作家は谷崎潤一郎と三島由紀夫でした。
ともに多彩なモチーフでエポックメイキングな作品を旺盛に発表している才能、力量に感嘆しています。
古典についても造形の深いキーンさんですが、明治以降の主要な作家・詩人・俳人について作品論・作家論を展開しています。
二葉亭四迷、鴎外、漱石、鏡花などから開高健、安部公房まで、その数49人です。
これを読めば日本近代文学の概要が頭に入ります。
造形の深さに圧倒されます。
キーンさんが取り上げている作家たちは、いわゆる文学もので、池波正太郎、山口瞳、五木寛之など大衆作家、推理小説家は含まれません。
岩波文庫に入っているようなブンガクシャのみです。
ちょっと不満です。
永井荷風については、その美文を絶賛しています。
わが老師・夏彦翁もそうでした。
荷風の作品はいくつか読みましたが、ピンときません。
唯一楽楽しめたのは「断腸亭日乗」でしたが、これも往時の大戦中の風物詩としての読み方でした。
再度、荷風の美文探索をしたいと思いました。
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