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学徒出陣の記録: あるグループの戦争体験 (中公新書 167) 新書 – 1968/8/1

4.0 5つ星のうち4.0 1個の評価

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 中央公論新社 (1968/8/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 1968/8/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 新書 ‏ : ‎ 222ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4121001672
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4121001672
  • カスタマーレビュー:
    4.0 5つ星のうち4.0 1個の評価

カスタマーレビュー

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上位レビュー、対象国: 日本

2015年10月19日に日本でレビュー済み
伊藤隆『歴史と私』(中公新書)の中で紹介されていたので、気になって入手しました。

昭和18年10月に東京大学の国史学科に入学した学生がその後どういう戦中戦後を過ごしたか(と言うか、過ごさざるを得なかったか)という記録です。
巻末に学生一覧が載っているので分かりやすいのですが、32人入学してこの本が出た昭和43年時点で存命だったのは29名、意外なことに戦病死した人が1名いるものの、戦死者は0人です。生き残った29人のうち19人の手記と1名への追悼文で構成されています。

この頃の大学は秋入学だった(※但し巻末の「むすびに代えて」によると一応4月入学もあったらしい)というのも恥ずかしながら初めて知ったんですが、入学してすぐに学徒動員令が発令されたため(昭和18年10月21日)実質2ヶ月しか講義を受けられなかったというとても運の悪い人たちのその後の運命も思想もかなりバラバラなのが意外でした。
19編それぞれに味わい深い内容です。内容は以下の通り
<生と死>海没(土田直鎮)、若くして逝ける者たち(川副武胤)、南方転々(田中春雄)、ミンゲ収容所(岸田善三郎)
<心の遍歴>懐疑と彷徨(尾藤正英)、汚辱の“学徒出陣”(色川大吉)、君皇のために死す(雑賀千尋)、歴史より宗教へ(吉岡繁)、戦列からの逃避(林勉)
<軍務の日々>出陣(竹内道雄)、海軍燃料敞(芝盛雄)、特攻訓練(村木勉)、ハリツケ師団(虎尾俊哉)、斥候隊(蜷川寿恵)
<銃後と前線>護南兵団(平野敏也)、ポツダム一等兵の記録(榎本宗次)、みちのくへの工場疎開(黒住武、菱刈隆永)
<大学の変転>戦時中の研究室(高橋昌郎)、よみがえる研究室-青村真明の意向を中心に-(色川大吉)
このうち色川大吉氏と高橋昌郎氏は検索した限りまだご存命のようです。

一番分かりやすかったのがあの色川大吉氏のコラムで、タイトル見てだいたい中身の予想が付いたので申し訳ないと思いつつざっと読みしてしまいました。ある意味「時代を反映した内容」なので史料的な価値はあると思います。読み応えがあるのは体験を淡々と書いているタイプの物で、南方に送られる途中で船が攻撃を受け沈没、9時間浮かび続けて九死に一生を得た話(「海没」)、特攻に志願した学生の心理(「若くして逝ける者たち」)、敗戦後の収容所での捕虜同士によるえげつない生存競争(「ミンゲ収容所」)など、すさまじい話の連続です。
他、これも恥ずかしながら初めて知ったのですが、身体の事情で学徒動員を免れた人もいたようで、その人達の体験談も初めて知るもので興味深い内容でした。軍需工場に勤労奉仕させられた人が多かったようですが(「みちのくへの工場疎開」)勤労奉仕すらさせられない状態の人は“研究室勤務”という名目で取りあえず大学には通えたものの直ぐに空襲でそれどころじゃなくなったこと(「戦時中の研究室」)など肩身の狭い状態だったことが伺えます。
生き残った学生達の戦後の道のりも険しい物で、ハイパーインフレや家族の死などにより3年で大学を卒業せざるを得なかったり(「戦時中の研究室」)、逆に卒業まで10年かかった人もいたようです。また「まとめに代えて」では東大文学部全体では半数近くが退学に追い込まれたことが紹介されています。

あと、この時代の「東大国史」と言えばあの「平泉澄」が牛耳っていたところとして有名ですが、当時の学生達から見た平泉の姿もちらほら登場します。ただ、学生達の大半は平泉に関心があって入ってきた訳じゃなかったのが意外でした。むしろ平泉嫌いなのに、東大国史に割り振られてしまったらしい人もいるようだ(「戦列からの逃避」)。

ピンポイントで見る戦争体験者の記録として貴重な内容だと思います。
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