邪馬台国問題と言えば専門家から一般まで百家争鳴、議論沸騰でなかなか収拾がつかない。基本文献である魏志倭人伝だけを文献史学の観点だけから見ていても解明は覚束ないように思える。
発掘の増加により徐々に増えている当時の考古資料が同時代史料ということもあり、この問題にアプローチする場合の基本史料となってくるはずである。
しかし、これに加えて民族学的視点も重要な示唆を与えうると思える。本書は博学な大物民族学者であった故大林太良氏による民族学的視点からのアプローチである。特に南方系・北方系といった倭人伝で語られている文化要素の系統などにこの本の独自性が現れているだろう。
この本が出版されてからかなりの年数が経つがやはり基本文献の一つとしての価値は変わらないであろう。
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邪馬台国: 入墨とポンチョと卑弥呼 (中公新書 466) ペーパーバック – 1977/4/1
大林 太良
(著)
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1977/4/1
- ISBN-104121004663
- ISBN-13978-4121004666
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1977/4/1)
- 発売日 : 1977/4/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 224ページ
- ISBN-10 : 4121004663
- ISBN-13 : 978-4121004666
- Amazon 売れ筋ランキング: - 388,198位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2010年6月1日に日本でレビュー済み
著者は民俗学・文化人類学の視点から『魏志』倭人伝に描かれる倭人の文化を眺め、入墨や貫頭衣などの南方的文化、すなわち現在、中国南部から東南アジアにかけての地域で観察される文化要素との親縁関係が圧倒的に大きいとの結論に至る。さらに『魏志』によれば、3世紀の朝鮮半島住民の文化や言語は、北部と南部でおおいに異なっていて、高句麗・夫余の父系的文化と、三韓地方の双系的文化が対抗する状況だったらしい。しかしその後の三国時代の記録では、半島全体が高句麗に代表される北方的文化に染められ、倭国と共通する南方的要素は薄まったそうだ。それゆえ著者は、朝鮮半島における北方化の影響が「謎の4世紀」に日本列島にも及び、北方と南方双方の文化要素を併せ持つ日本の古代国家が誕生したという。
また最終章で著者は、歴史ミステリーの領域にも果敢に踏み込み、邪馬台国の位置は北九州でかつ沿岸部(先進地域)ではなく内陸部(後背地)だと述べる。鉄器の普及など文化接触による内陸部の相対的貧困化、さらに奴国に代表される港市への嫉妬が、漢王朝の滅亡を契機に内陸部の土着主義運動(一種のナショナリズム?)を引き起こし、倭国大乱といわれる状況をまねいたというのだ。そして乱の後に、聖俗の役割分担がはっきりした女王−男弟王権が生まれ、港市の管理者としての王から、宗教的同盟を結んだ諸国の代表としての王へと変化したと述べ、その所在地も沿岸部から内陸部に移ったのだと説明するが、なかなか説得力があると思った。
また最終章で著者は、歴史ミステリーの領域にも果敢に踏み込み、邪馬台国の位置は北九州でかつ沿岸部(先進地域)ではなく内陸部(後背地)だと述べる。鉄器の普及など文化接触による内陸部の相対的貧困化、さらに奴国に代表される港市への嫉妬が、漢王朝の滅亡を契機に内陸部の土着主義運動(一種のナショナリズム?)を引き起こし、倭国大乱といわれる状況をまねいたというのだ。そして乱の後に、聖俗の役割分担がはっきりした女王−男弟王権が生まれ、港市の管理者としての王から、宗教的同盟を結んだ諸国の代表としての王へと変化したと述べ、その所在地も沿岸部から内陸部に移ったのだと説明するが、なかなか説得力があると思った。