IMFの成り立ちから、現在の至るまでの成果を、組織体や運営形態も絡めながら、その正体と問題点
更は改善案の提議までを行った意欲的な一冊。
・そもそもIMFは何をする機関なのか?
・IMFの施策は世界経済に寄与したのか?(実際には寄与していない)
・寄与していないのに、現在も世界経済システム上で一定の地位を占めている理由は?
・世界銀行(国際復興開発銀行)との違いは?
・IMFに代わる国際機関とは?
・・・といったことに興味のある方にはお勧めな一冊です。但し(これでも新書ということもあって
平易には書かれていると思うが)、国際経済論やマクロ経済の基礎知識が無いと難しいのかな、と思える
箇所も有り(専門用語の多用もその感を強くさせている。本書を入門書としてとらえるなら、思い切った
言い換えも有りだと考えます)。
個人的には、IMFの支援(ラテンアメリカやアジア各国で)が、何故失敗したのか?(著者曰く
「途上国が早い段階から資本・金融自由化を進めると、中長期的には消費や所得の不安定性が増す
ので、経済成長は鈍化する」と。)を、具体例を用いて説明している箇所は参考になりました。
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IMF(国際通貨基金) - 使命と誤算 (中公新書 2031) 新書 – 2009/11/26
大田 英明
(著)
- ISBN-104121020316
- ISBN-13978-4121020314
- 出版社中央公論新社
- 発売日2009/11/26
- 言語日本語
- 本の長さ219ページ
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2009/11/26)
- 発売日 : 2009/11/26
- 言語 : 日本語
- 新書 : 219ページ
- ISBN-10 : 4121020316
- ISBN-13 : 978-4121020314
- Amazon 売れ筋ランキング: - 738,631位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,647位中公新書
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著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年8月30日に日本でレビュー済み
本書はまず1章でIMFの問題点を洗い出し、2章以下でIMFの歴史や活動を見ながら1章での問題提起を補完している。特に興味深いのがIMFの設立の経緯で、この段階に既に後に明らかになるIMFの問題点を孕んでいるといえるだろう。つまりIMFはアメリカの主導で設立されたためその役割はアメリカの利益追求、その性格は市場原理主義と方向付けられたということだ。前者はアメリカと対象国との距離間に比例した優遇処置、後者は構造改革の要求となって表れる。しかし冷戦後複雑化する社会においては市場原理主義=アメリカの国益という図式は成り立たない。支援の実行においては相手国の事情によりいっそうの関心を払うべきだろう。
2009年12月18日に日本でレビュー済み
金融破綻国家の「最後の貸し手」国際通貨基金の成り立ちから始まる本書は、批判的に同基金の運営を論じている。85%の特別多数決の上で、16%という拒否権を持つ唯一の国アメリカに配慮して、資本も通貨も徹底して自由化を是とするアメリカ式のグローバリズムに立脚し、融資条件も親米国なら甘い傾向があるという。
経済危機において、IMFの処方箋は1つしかないといい、著者は98年のアジア通貨危機を例に、IMFの融資条件、いわゆるコンディショナリティの厳しさと的外れさを厳しく批判する。特に、増税に歳出減、金利引き上げ、銀行リストラや民営化などの構造改革は短期的な危機克服には役立たなかったとする。IMFのコンディショナリティなら、経済危機国家は金利引き上げで輸入を減らし、返済のために財政収支もさせなくてはならない。しかし、いずれも短期的には薬になるどころか火に油を注ぐ結果になっているという。支出を減らすことで経済成長の鈍化や、さらなる税収減をもたらした。また、金利引き上げで海外からの通貨購入が見込まれるというもの、レートが急落している経済危機国の通貨を買うバカもいないから、下落に歯止めがかからないどころか、当該国を混乱させるだけというものだ。08年以降の不況で先進国がいずれも財政支出拡大、金利引き下げに走っているのがいい証拠だという。
著者の指摘する問題点など、本書の骨子は第一章で言い尽くされている感はあるが、2〜4章でIMFの設立経緯から今日までの流れを一望できる。とりわけ、4章のアジア通貨危機において、IMFのプログラム実施後、不況がさらに深刻化したという論は興味深い。ほかに発展途上国における資本規制の有効性を、経済成長に貢献しない短期資金が流入する危険を、実証を挙げて指摘しているのもうなずけた。批判的ではあるが、重要性を増すIMFの政策を俯瞰的に読み解ける本だと思う。
経済危機において、IMFの処方箋は1つしかないといい、著者は98年のアジア通貨危機を例に、IMFの融資条件、いわゆるコンディショナリティの厳しさと的外れさを厳しく批判する。特に、増税に歳出減、金利引き上げ、銀行リストラや民営化などの構造改革は短期的な危機克服には役立たなかったとする。IMFのコンディショナリティなら、経済危機国家は金利引き上げで輸入を減らし、返済のために財政収支もさせなくてはならない。しかし、いずれも短期的には薬になるどころか火に油を注ぐ結果になっているという。支出を減らすことで経済成長の鈍化や、さらなる税収減をもたらした。また、金利引き上げで海外からの通貨購入が見込まれるというもの、レートが急落している経済危機国の通貨を買うバカもいないから、下落に歯止めがかからないどころか、当該国を混乱させるだけというものだ。08年以降の不況で先進国がいずれも財政支出拡大、金利引き下げに走っているのがいい証拠だという。
著者の指摘する問題点など、本書の骨子は第一章で言い尽くされている感はあるが、2〜4章でIMFの設立経緯から今日までの流れを一望できる。とりわけ、4章のアジア通貨危機において、IMFのプログラム実施後、不況がさらに深刻化したという論は興味深い。ほかに発展途上国における資本規制の有効性を、経済成長に貢献しない短期資金が流入する危険を、実証を挙げて指摘しているのもうなずけた。批判的ではあるが、重要性を増すIMFの政策を俯瞰的に読み解ける本だと思う。
2009年12月25日に日本でレビュー済み
ベルリンの壁が崩壊して20年、十分な準備のないままグローバル化が進展してゆく世界。日々プレゼンスを増す、中国、インドなどの巨大プレーヤーの登場。そうした中にあって、いち早く準備なきグローバリゼーションの危険を露呈したのが、アジア通貨危機であり、近年のサブプライム・クライシスとリーマンショックであった。
こうした状況を目の当たりにして、政策当局、金融や学者の世界に、問題の根源を見すえ、建設的な提言を出すよう求めるのは、しごく当然であろう。
太田英明氏の「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」は、そうした要望の一面に応える内容である。すなわち、第2次大戦中の1944年に、当時の時代要請に応えるべく設計されたIMFの機能と役割をレヴューしながら、今日的な存在意義を問う本である。通常の入門書を超えているのは、新しい時代の要請に応えうる国際金融機構とは何かを問うスタンスがベースにあるため、近年の行き詰まりや失敗とおぼしきことにも、率直な見解を示している点である。読んだ後、IMFのみならず、世銀、国際決済銀行(BIS)なども含め、国際金融機構の総括的見直しと整理の必要がすんなり理解できたのは、収穫であった。注文としては、世界経済との関連の年表がついていれば、さらに分かりやすかったとおもわれる。
こうした状況を目の当たりにして、政策当局、金融や学者の世界に、問題の根源を見すえ、建設的な提言を出すよう求めるのは、しごく当然であろう。
太田英明氏の「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」は、そうした要望の一面に応える内容である。すなわち、第2次大戦中の1944年に、当時の時代要請に応えるべく設計されたIMFの機能と役割をレヴューしながら、今日的な存在意義を問う本である。通常の入門書を超えているのは、新しい時代の要請に応えうる国際金融機構とは何かを問うスタンスがベースにあるため、近年の行き詰まりや失敗とおぼしきことにも、率直な見解を示している点である。読んだ後、IMFのみならず、世銀、国際決済銀行(BIS)なども含め、国際金融機構の総括的見直しと整理の必要がすんなり理解できたのは、収穫であった。注文としては、世界経済との関連の年表がついていれば、さらに分かりやすかったとおもわれる。
2010年1月25日に日本でレビュー済み
かつてのアジア金融危機から、先般のリーマンショックなど国際的に大きな金融問題が生じるたびに耳にするIMFであるが、その実像は今ひとつよくわからない。
本書は、そのIMFの創設から役割の変遷と支援に当たって生じてきた課題、そして将来へ向けての展望をコンパクトにまとめたものである。
その創設は1944年戦後の世界経済体制の安定化を目指すべく、アメリカ主導で、ケインズの主張した国際通貨のような形にはならず、まさにドルを守るべく設けられたという。
ニクソンショックによりこのブレトンウッズ体制が崩壊した後は、その役割も変質し金融破綻した国家への融資とその短期回収を目指した再生プログラムの押しつけが基本になっている。
しかしながら、アジアショック時には一層支援国の経済を悪化させ、ロシアでは国際のデフォルトという事態まで発生させるなど様々な弊害を生じさせているにもかかわらず、リーマンショック後の支援でもそれらの反省を生かしきっているとは言えない。
アジアショック時に日本が提唱したアジア通貨基金構想はアメリカによって骨抜きにされたが、今再び提唱されていることに大いに期待したい。
加えて、ドルの信任が低下しつつある今、将来的にはかつてケインズの提唱していた通貨バスケットによる国際通貨のような仕掛けも必要になってくるのではないかと考えさせられた。
それにしても、IMF創設時にケインズ案が採択されていたならば、どのような世界経済になっていたのであろうか。
本書は、そのIMFの創設から役割の変遷と支援に当たって生じてきた課題、そして将来へ向けての展望をコンパクトにまとめたものである。
その創設は1944年戦後の世界経済体制の安定化を目指すべく、アメリカ主導で、ケインズの主張した国際通貨のような形にはならず、まさにドルを守るべく設けられたという。
ニクソンショックによりこのブレトンウッズ体制が崩壊した後は、その役割も変質し金融破綻した国家への融資とその短期回収を目指した再生プログラムの押しつけが基本になっている。
しかしながら、アジアショック時には一層支援国の経済を悪化させ、ロシアでは国際のデフォルトという事態まで発生させるなど様々な弊害を生じさせているにもかかわらず、リーマンショック後の支援でもそれらの反省を生かしきっているとは言えない。
アジアショック時に日本が提唱したアジア通貨基金構想はアメリカによって骨抜きにされたが、今再び提唱されていることに大いに期待したい。
加えて、ドルの信任が低下しつつある今、将来的にはかつてケインズの提唱していた通貨バスケットによる国際通貨のような仕掛けも必要になってくるのではないかと考えさせられた。
それにしても、IMF創設時にケインズ案が採択されていたならば、どのような世界経済になっていたのであろうか。