スタンダールなど昔の外国人旅行者から見たイタリアに関心があり、それについてまとまった本がないかなと思っていたところで、見つけて嬉しくなりました。イタリアの美術や歴史が好きになると、必ずどこかでロマン主義時代の文人や芸術家によるイタリア(特にローマ)賛美の言葉に出会うと思います。一大ジャンルを成しているとも言えるイタリア旅行記を書いた人々がどのように旅し何を見ていたかを知ると、我々現代人のイタリア旅行もより味わい深いものになるのではないでしょうか。
本の中身も表面をなぞる概説だけではなく筆者なりの研究テーマをもってしっかり書いてあると思います。一方、リサーチや認識不足と思われる誤解もあるので星4つです。他の口コミで指摘されてないところで言うと「ヴェラスケス」はベラスケスと書くのが普通だし(スペイン語のVはバビブベボ)、ロンドンの地名「ポール・モール」はおそらくペルメル、教皇インノケンティウス10世がドリア・パンフィーリ家出身とありますがパンフィーリ家でいいのでは(現在邸宅がドーリア・パンフィーリ美術館と呼ばれるのは当教皇より後の時代にドーリア家と婚姻で結びついたからではなかったかと)。また本文中ニースが南仏扱いされていますが、1860年にフランスに割譲されるまではサヴォイア家の土地で、19世紀前半の人からもイタリアとしてみなされています。
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イタリア旅行 (中公新書 2126) 新書 – 2011/8/25
河村 英和
(著)
18~19世紀のヨーロッパに起こったイタリア旅行ブーム。現在とは異なる観光地やルート、土産などを通し、ヨーロッパ文化の源泉を探る
- ISBN-104121021266
- ISBN-13978-4121021267
- 出版社中央公論新社
- 発売日2011/8/25
- 言語日本語
- 本の長さ252ページ
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2011/8/25)
- 発売日 : 2011/8/25
- 言語 : 日本語
- 新書 : 252ページ
- ISBN-10 : 4121021266
- ISBN-13 : 978-4121021267
- Amazon 売れ筋ランキング: - 917,196位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年10月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
17世紀に始まるイタリアへのグランド・ツアーへの概要をパノラミックに俯瞰するには良書だ。著者の思想が強く表れた本ではないが、決して内容の伴わない薄っぺらな作品ではなく、例えば第二章から第4章にかけてのイタリア旅行指南として書かれたガイド・ブックについての言及や、時代と共に旅行目的も変わり、それにつれて変遷するルートやツーリストを受け入れるホテルの状況などは著者独自の専門的な研究が見られる。
実用的なアイティネラリーを組んだ旅行ガイド・ブックが既に1763年に出版されているのは、当時から如何に多くのツーリストがイタリアの諸都市を訪れていたかの証明でもある。また版画によるイメージ付の案内書は旅行者の興味を一層掻き立てたに違いない。こうしたガイド・ブックも時代によって変わる旅の目的とニーズに合わせた詳細な地図入りのポケット・サイズ版が登場し、出版社がその機能性を競い合って今日のガイド・ブックを作り上げていることも興味深い。当初のグランド・ツアーの目的が古典を学ぶことにあったために、古代遺跡が集中するローマ、ナポリにその注意が集中し、現代を代表する観光都市フィレンツェが19世紀に至るまで殆んど無視されていた事実は意外だった。
第四章の宿泊施設についての考察も秀逸だ。イタリアはその観光客の多さに比較して必ずしも受け入れのための設備が整っているとは言えない。古い時代の区画の中に立ち並ぶ既存の宮殿のホテルへの転用は、米国式の大型リゾート・ホテルを街中に立てることができないイタリアの都市の宿命だ。また郊外では修道院のホテル化も珍しくない。しかし元来個人の邸宅として使われていた宮殿は、いくら改装したところで大量の旅行者を収容するには適切ではなく、勢い宿泊者を制限した高級ホテルになる。イタリアに機能的でエコノミーなホテルが充実していないのはそれなりの理由があるわけだ。
尚いくつか著者の思い違いと思われる記述があるので指摘しておく。146ページにヴィチェンツァ州とあるが、ヴィチェンツァは州名ではなくヴェネト州に属する県及び県庁所在都市の名称になる。また234ページにあるローマの外国人墓地は地下鉄オスティエンセ駅に程近いと書かれてあるが、ローマの地下鉄にオスティエンセの駅はなく、隣接しているピラミデ駅のことと思われる。
実用的なアイティネラリーを組んだ旅行ガイド・ブックが既に1763年に出版されているのは、当時から如何に多くのツーリストがイタリアの諸都市を訪れていたかの証明でもある。また版画によるイメージ付の案内書は旅行者の興味を一層掻き立てたに違いない。こうしたガイド・ブックも時代によって変わる旅の目的とニーズに合わせた詳細な地図入りのポケット・サイズ版が登場し、出版社がその機能性を競い合って今日のガイド・ブックを作り上げていることも興味深い。当初のグランド・ツアーの目的が古典を学ぶことにあったために、古代遺跡が集中するローマ、ナポリにその注意が集中し、現代を代表する観光都市フィレンツェが19世紀に至るまで殆んど無視されていた事実は意外だった。
第四章の宿泊施設についての考察も秀逸だ。イタリアはその観光客の多さに比較して必ずしも受け入れのための設備が整っているとは言えない。古い時代の区画の中に立ち並ぶ既存の宮殿のホテルへの転用は、米国式の大型リゾート・ホテルを街中に立てることができないイタリアの都市の宿命だ。また郊外では修道院のホテル化も珍しくない。しかし元来個人の邸宅として使われていた宮殿は、いくら改装したところで大量の旅行者を収容するには適切ではなく、勢い宿泊者を制限した高級ホテルになる。イタリアに機能的でエコノミーなホテルが充実していないのはそれなりの理由があるわけだ。
尚いくつか著者の思い違いと思われる記述があるので指摘しておく。146ページにヴィチェンツァ州とあるが、ヴィチェンツァは州名ではなくヴェネト州に属する県及び県庁所在都市の名称になる。また234ページにあるローマの外国人墓地は地下鉄オスティエンセ駅に程近いと書かれてあるが、ローマの地下鉄にオスティエンセの駅はなく、隣接しているピラミデ駅のことと思われる。
2011年11月1日に日本でレビュー済み
イタリア旅行といっても、十八世紀に流行した「グランド・ツアー」のことで、若い英国貴族が教養を身につけるために行った長期のヨーロッパ大陸旅行のことです。イタリアがその目的地とされていました。
このツアー熱によって、旅行案内書が発達し、お土産として風景画が発展して理想風景を生みそれが英国式庭園へと結実したということを知って、ピクチャレスクというのが絵のように美しいのではなく、絵の通りに美しいのだということが理解できました。
昔、野坂昭如が、「ニ・ニ・ニーチェかサルトルか みんな悩んで大きくなった。」という歌を歌っていましたが、そのニーチェも実は旅して大きくなっていました。ニーチェは、毎年イタリアを旅行し「ツァラトストラはかく語りき」の構想もシチリア島で練ったそうです。
当時からポンペイも有名で、「キリストの涙」というワインもあったというから驚きです。私もツアーでポンペイに立ち寄った際にこのワインを買ってしまいました。
このツアー熱によって、旅行案内書が発達し、お土産として風景画が発展して理想風景を生みそれが英国式庭園へと結実したということを知って、ピクチャレスクというのが絵のように美しいのではなく、絵の通りに美しいのだということが理解できました。
昔、野坂昭如が、「ニ・ニ・ニーチェかサルトルか みんな悩んで大きくなった。」という歌を歌っていましたが、そのニーチェも実は旅して大きくなっていました。ニーチェは、毎年イタリアを旅行し「ツァラトストラはかく語りき」の構想もシチリア島で練ったそうです。
当時からポンペイも有名で、「キリストの涙」というワインもあったというから驚きです。私もツアーでポンペイに立ち寄った際にこのワインを買ってしまいました。
2011年9月23日に日本でレビュー済み
18世紀以降、欧州でブームとなった「グランドツアー」によって、数多くの人々がイタリアを旅行の主たる目的地とした。「グランドツアー」以来、イタリアを訪れた人々の目的、来歴、或いは逸話を纏めたものが本書の概要である。「初めてのイタリア旅行を前にして、何かしらの知的背景を得たい・・・」という読者にとって、本書は相応の価値があろう。しかし、雑多な参考文献からの孫引きが多いため、ある程度イタリアに「詳しい」読者にとっては、「どこかで読んだ・聞いた話」が大半で、新味は左程無いかも知れない。また、文中でイタリア語や英語の併記がなく、地名・人名・作品名は殆どが「カタカナ」表記であるが、原語の発音と一致していないものが散見される(おそらく和文で書かれた参考文献内の表記をそのまま転記している)。特にイタリア語に関しては、原語発音を知っている者であれば表記しない「カタカナ」も含まれているため、残念である。良く纏まった良書であるとは思うが、幾つかの「難」を汲み、「星3つ」。