「満身これ学究」, 題名となったこの言葉は 井上 靖 が 小松 茂美 を評して言った言葉だという. 読んでの感想としてはまさにその通りだと思える. 最終的に『古筆学』にたどり着いた 小松 茂美 のすごさをひしひしと感じる.
『古筆学』の場合に限らず, 小松 茂美 が取った手法は工学的手法に他ならない. 言ってみれば CT と同じである. 同様の手法は心理学での性格判断にも用いられているが, モノの本質を見極めるための非常に「真っ当」な手法である(小松 茂美 にしてみれば「当たり前の事」なのかもしれないが). 工学屋はこの手法を自然に, 又は先輩の指導によって身につける. 身につけられなかったら工学屋として一人前にはなれない. 小松 茂美 は この事を彼の旧制中学校時代のアンジン先生(安藤 仁一)の言葉からその重要性を知る.
彼の置かれた環境は正に『民間学』の先駆者が置かれた環境と同じだろう. 小松 茂美 もやはり『民間学』の一人と言えるのではないか.
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古筆学の創始者、小松茂美の闘い 満身これ学究 単行本 – 2008/12/5
吉村 克己
(著)
- 本の長さ310ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2008/12/5
- ISBN-104163709908
- ISBN-13978-4163709901
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2008/12/5)
- 発売日 : 2008/12/5
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 310ページ
- ISBN-10 : 4163709908
- ISBN-13 : 978-4163709901
- Amazon 売れ筋ランキング: - 494,196位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 206位東洋・日本美術史
- - 75,992位ノンフィクション (本)
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2009年1月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2011年10月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分の学生時代、小松茂美先生はあこがれの先生で、どうにかしてお近づきになりたいと願ったものだが、その方法がわからず結局叶わずじまいだった。
この本の小松先生の学問に対する姿勢、執念には全く頭が下がる。学閥の嫌がらせなど意に介さず、自分の研究を貫く。専門分野などにとらわれず様々なものを掘り起こしていく。昔も今もこんな先生がどこの大学にいるであろうか。もっと長生きしていただきたかった。それでも広島で被爆をされ、九死に一生を得たことを思えばそうともいえないであろうか。
この本の小松先生の学問に対する姿勢、執念には全く頭が下がる。学閥の嫌がらせなど意に介さず、自分の研究を貫く。専門分野などにとらわれず様々なものを掘り起こしていく。昔も今もこんな先生がどこの大学にいるであろうか。もっと長生きしていただきたかった。それでも広島で被爆をされ、九死に一生を得たことを思えばそうともいえないであろうか。
2020年1月21日に日本でレビュー済み
最近よく本を買うのだが、よく読まないことがほとんどだが、この本は読みました
おもしろいです、学会というのは今でも古いしきたりがあるのか、小松氏のように本当に研究する人がたくさんいてほしいものだ、大学を出ても業績を残せない人は、頭が悪いのだろう、小松氏は中学卒でも、頭がいいから偉大な業績を残したのだと思う、こういう人はもう出ないのかもしれない、残念だ、こういう人が200年ぐらい生きたら学問は進歩するでしょう
おもしろいです、学会というのは今でも古いしきたりがあるのか、小松氏のように本当に研究する人がたくさんいてほしいものだ、大学を出ても業績を残せない人は、頭が悪いのだろう、小松氏は中学卒でも、頭がいいから偉大な業績を残したのだと思う、こういう人はもう出ないのかもしれない、残念だ、こういう人が200年ぐらい生きたら学問は進歩するでしょう
2009年6月30日に日本でレビュー済み
「古筆学」とは、切れ切れになった書跡から原典や筆者、写本の成立や異合を解き明かしていく学問。それを一代で築き上げた異能の学者・小松茂美の評伝。
中卒で鉄道省の職員となり広島で被爆。病床で「息子さんは助からない」と父親に告げる医者の言葉を聞く。その文字通りの無一物から、ひたすら「平安の美」に突き動かされて前人未踏の業績を積み上げたそのエネルギッシュな生涯には圧倒される思いがする。
彼の生涯ばかりでなく、人と人との出会いというものの強烈さにも感銘を受ける。小松が師事した「万年助教授」の池田亀鑑の鬼気迫る学究の日々。彼を支援した国鉄の大幹部。意地をかけた出版人たち。彼と渡りあった個性豊かな古美術商たち。
さらに感銘を覚えるのは、特上の工芸美術や文学、歴史記録が、身分にとらわれず無数の無名人によって千年に渡る幾多の戦乱と災厄を越えて伝承されてきたというユニークな伝統のあり方だ。日本の美の歴史は、万民の美意識が支えた豊穣の海といってよい。
中卒で鉄道省の職員となり広島で被爆。病床で「息子さんは助からない」と父親に告げる医者の言葉を聞く。その文字通りの無一物から、ひたすら「平安の美」に突き動かされて前人未踏の業績を積み上げたそのエネルギッシュな生涯には圧倒される思いがする。
彼の生涯ばかりでなく、人と人との出会いというものの強烈さにも感銘を受ける。小松が師事した「万年助教授」の池田亀鑑の鬼気迫る学究の日々。彼を支援した国鉄の大幹部。意地をかけた出版人たち。彼と渡りあった個性豊かな古美術商たち。
さらに感銘を覚えるのは、特上の工芸美術や文学、歴史記録が、身分にとらわれず無数の無名人によって千年に渡る幾多の戦乱と災厄を越えて伝承されてきたというユニークな伝統のあり方だ。日本の美の歴史は、万民の美意識が支えた豊穣の海といってよい。
2009年5月5日に日本でレビュー済み
読み応えある人物評伝。
本書を開くまで小松茂美や彼が提唱した「古筆学」の予備知識は皆無だったが、最終ページまで興味が途絶えなかったのは、その生き方があまりに壮絶だからだろう。命がけで学術研究に打ち込んだ、ひとつの貴重な人生を味わった気がした。
常識を超える数々の精力的な活動。80歳を過ぎた現在もなお研究に取り組む情熱。読み終えたあと「学術研究とはいったい何だろうか?」としばらく考えさせられた。副題にある「闘い」は誇張ではない。
20歳で生死をさまようことになる広島での原子爆弾被爆、研究者人生を決定する『平家納経』との対面シーンなどは、その場に立ち合ったかと思うほどの臨場感があった。
表面をさらっと撫でわかった気になる読書とは、まるで違う体験だった。
本書を開くまで小松茂美や彼が提唱した「古筆学」の予備知識は皆無だったが、最終ページまで興味が途絶えなかったのは、その生き方があまりに壮絶だからだろう。命がけで学術研究に打ち込んだ、ひとつの貴重な人生を味わった気がした。
常識を超える数々の精力的な活動。80歳を過ぎた現在もなお研究に取り組む情熱。読み終えたあと「学術研究とはいったい何だろうか?」としばらく考えさせられた。副題にある「闘い」は誇張ではない。
20歳で生死をさまようことになる広島での原子爆弾被爆、研究者人生を決定する『平家納経』との対面シーンなどは、その場に立ち合ったかと思うほどの臨場感があった。
表面をさらっと撫でわかった気になる読書とは、まるで違う体験だった。