従来の民俗史観では、女性は血の穢れを持った存在として出産や生理の時など、「月小屋」に隔離されてきた。著者は、その実これらは分娩や生理で疲れた心身をいたわるための休息の場だったとする。産後は新生児の世話だけに専念できる、母子安息の場であったと。非常に新しい前向きな分析だと思う。
また、産の穢れから守るため男性を廃してきた、とする考えを180度転換して紹介されている。女だけで無事産んでみせる、としてきた、女性の矜持を先達の話をあげて見つめなおす。
さらに嫗の皺の寄った乳房は多くの子供たちを育み、育て上げた尊い証なのである、と。私自身、子を産んだ者として男性の著者のこのような賛歌を目にし、涙があふれた。
巻末では著者の女性への思いが結集されたかのごとく、「な見たまいその伝統」を紹介する。古事記で出産の場面を夫に見ないで欲しいと願う女神の思い。これは女性が絶叫したり、取り乱した姿を、愛する夫に見せたくない、という思いではないかと、著者は書いておられる。
私も出産時、立会いはしないでいい、と夫に言い残して分娩室に入った。この本を読んで、あれは本能的なものだったのだなあ、と意を深くした。
本書は女性の一生を少女から嫁、母、嫗へと一本の道のように、古老の話を聞きながら紹介し、従来の穢れ中心であった、女性の民俗学を真っ向から変えた、著者独自の女性賛歌である。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
民俗誌・女の一生: 母性の力 (文春新書 534) 新書 – 2006/10/1
野本 寛一
(著)
- ISBN-104166605348
- ISBN-13978-4166605347
- 出版社文藝春秋
- 発売日2006/10/1
- 言語日本語
- 本の長さ234ページ
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2006/10/1)
- 発売日 : 2006/10/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 234ページ
- ISBN-10 : 4166605348
- ISBN-13 : 978-4166605347
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,000,576位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,578位文春新書
- - 2,423位文化人類学一般関連書籍
- - 120,337位暮らし・健康・子育て (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中3.8つ
5つのうち3.8つ
3グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。