政治家を、それもいま権力を握りリーダーとして活躍している政治家を評するのは
まことにむつかしい。筆者はそれをあえて「人物評論」という手法で行う。
「人物評伝」がその全人物像を通して歴史との関わりを明らかにするのに対し、
「人物評論」はその人物の来し方行く末を見通して今という時代を切るのである。
従って当書ではあまりその人物に対する批判めいた話はでてこない。甘いと言われ
ようと政治家の個性をその矛盾も含めて描き出し人間味を評価する。政治家の出自や
そのよってたつ考え方をたんたんと描く。政治家には毀誉褒貶がつきものだが、
なるべくその良いところを見ようとしている。
だから読者の側もまなざしに多少の優しさを持って読む必要がある。
取り上げられる政治家は25人。ひとり8頁程度。3.11後の政治を象徴する
安倍政権とその周辺にいる政治家が中心だ。具体的には、
o 安倍政権とは何か(麻生太郎、山口那津男、谷内正太郎、菅義偉、甘利明、安倍晋三)
o 自民党の力の秘密(古賀誠、野中広務、脇雅史、細田博之、幸村正彦、二階俊博)
o チャレンジャーの資格(石破茂、細野豪志、岡田克也、岸田文雄、谷垣禎一、小渕優子、舛添要一)
o 失敗の研究(仙石由人、与謝野馨、小沢一郎)
o 清和会とはなにか(森喜朗、小泉純一郎、福田康夫)
著者は言う。
・・政治家とは摩訶不思議な存在である。また厄介な存在でもある。
でもフッと見せるホンネの部分とあくまでもタテマエの部分、それらが
相俟って彼らのチャーミングさを醸し出しているのは間違いない。・・
例えば、森喜朗。最後の正統派キャリアパス政治家であるが、それゆえか総理と
しては国民やマスコミにまったく人気がなかった。しかし著者の評価は高い。
今も(議員を引退したのちも)元総理として広く政治外交にかかわる。
御厨に言わせれば、森は一般大衆を相手とするよりも、ある仕切られた政治空間の
中で調整に尽力しコトを成し遂げるという。人に嫌われる役目を自ら引き受けて、
それをめくらましとしてコトを成就するのである。ラグビーのボールのように
どこに転がるかわからない政治の世界で、森の政治行動は世間の常識とかけ離れる
ことなく、平凡で誠実で保守的な態度を貫き、ちゃんと結果を残している。
御厨貴氏の「優しい」評論に対して「悪意」をうけもつのが黒鉄ヒロシ描く肖像画。
実にシュールで秀逸である。この絵を眺めていると政治家の怪物度指数が浮かび
上がってくる。私の選んだ怪物度ベスト3は以下の3人である。
1.谷内正太郎
2.与謝野馨
3.脇雅史
ほかの読者は怪物として誰を選ぶだろうか。
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政治の眼力 永田町「快人・怪物」列伝 (文春新書 1029) 新書 – 2015/6/19
御厨 貴
(著)
政治を動かしているのは「イデオロギー」でも「政策」でもない。「人」だ。
政治は、ルールがあるようでいてルールのない世界、組織立っているようでいて組織立っていない世界、理屈だけでは通用せず、運と実力がすべてを支配する世界。だからこそ、政治に緊張が生まれ、政治家の個性がますます引き立つ。
本書に登場するのは、安倍晋三から菅義偉・二階俊博まで、いずれも今日の日本を動かす政治家25名。
著者は、これまで政治家や官僚たちの貴重な証言を記録に残してきた「オーラル・ヒストリー」の第一人者。TBS「時事放談」の司会も務め、生の政治家にこれほど会ってきた政治学者は他にいない。その著者が、それぞれの政治家に「一対一」の真剣勝負で直接会い、その人物の核心にズバッと迫る。これを読めば日本の政治が断然面白くなる!
(目次)
■安倍政権とは何か――麻生太郎、山口那津男、谷内正太郎、菅義偉、甘利明、安倍晋三
■自民党の力の秘密――古賀誠、野中広務、脇雅史、細田博之、高村正彦、二階俊博
■チャレンジャーの資格――石破茂、細野豪志、岡田克也、岸田文雄、谷垣禎一、小渕優子、舛添要一
■失敗の研究――仙谷由人、与謝野馨、小沢一郎
■清和会とは何か――森喜朗、小泉純一郎、福田康夫
政治は、ルールがあるようでいてルールのない世界、組織立っているようでいて組織立っていない世界、理屈だけでは通用せず、運と実力がすべてを支配する世界。だからこそ、政治に緊張が生まれ、政治家の個性がますます引き立つ。
本書に登場するのは、安倍晋三から菅義偉・二階俊博まで、いずれも今日の日本を動かす政治家25名。
著者は、これまで政治家や官僚たちの貴重な証言を記録に残してきた「オーラル・ヒストリー」の第一人者。TBS「時事放談」の司会も務め、生の政治家にこれほど会ってきた政治学者は他にいない。その著者が、それぞれの政治家に「一対一」の真剣勝負で直接会い、その人物の核心にズバッと迫る。これを読めば日本の政治が断然面白くなる!
(目次)
■安倍政権とは何か――麻生太郎、山口那津男、谷内正太郎、菅義偉、甘利明、安倍晋三
■自民党の力の秘密――古賀誠、野中広務、脇雅史、細田博之、高村正彦、二階俊博
■チャレンジャーの資格――石破茂、細野豪志、岡田克也、岸田文雄、谷垣禎一、小渕優子、舛添要一
■失敗の研究――仙谷由人、与謝野馨、小沢一郎
■清和会とは何か――森喜朗、小泉純一郎、福田康夫
- 本の長さ207ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2015/6/19
- ISBN-104166610295
- ISBN-13978-4166610297
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2015/6/19)
- 発売日 : 2015/6/19
- 言語 : 日本語
- 新書 : 207ページ
- ISBN-10 : 4166610295
- ISBN-13 : 978-4166610297
- Amazon 売れ筋ランキング: - 769,922位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,385位文春新書
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年7月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2015年7月10日に日本でレビュー済み
政治家寸評。
人物像を端的に切り取っている。
歴史認識と集団的自衛権に対するスタンスを視点の軸にしているので
ごく最近の政治ニュースを読む際にも参考になる。
内容的にはジャーナリズムの範疇であり、政局とか永田町の世界に
関心のない私にとっては★4つですが、面白く読めました。
人物像を端的に切り取っている。
歴史認識と集団的自衛権に対するスタンスを視点の軸にしているので
ごく最近の政治ニュースを読む際にも参考になる。
内容的にはジャーナリズムの範疇であり、政局とか永田町の世界に
関心のない私にとっては★4つですが、面白く読めました。
2015年9月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
筆者の人物伝はとても分かりやすく、切り口が新鮮です。
それぞれの政治家の強み、特徴を浮かび上がらせて、役割が果たせるように
リーダーが引っ張っていきます。
リーダーには「綸言汗の如し」という覚悟がないと信頼感はうまれません。
リーダーである安倍首相が、歴史修正主義、戦前のように権力を行使しやすいように
動こうとしている懸念に対して、これらの人々がブレーキを欠けないとすれば、
政治屋になって、道を誤るリスクが大きくなります。
自民党は総裁選が無投票になるなど、健全な民主主義が育っているとは思えず、
マスコミの活動も歴史的に見て弱い部分があることを認識して、何らかの行動が必要です。
それぞれの政治家の強み、特徴を浮かび上がらせて、役割が果たせるように
リーダーが引っ張っていきます。
リーダーには「綸言汗の如し」という覚悟がないと信頼感はうまれません。
リーダーである安倍首相が、歴史修正主義、戦前のように権力を行使しやすいように
動こうとしている懸念に対して、これらの人々がブレーキを欠けないとすれば、
政治屋になって、道を誤るリスクが大きくなります。
自民党は総裁選が無投票になるなど、健全な民主主義が育っているとは思えず、
マスコミの活動も歴史的に見て弱い部分があることを認識して、何らかの行動が必要です。
2016年7月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
政治家の見極め方 (NHK出版新書 482)は面白く、その中で紹介されていたので買い、我慢して3割程度読みましたが、全く面白くなかったです。
2016年5月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
筆者も人間だから仕方のないことかもしれませんが、自分の好き嫌いで一部の政治家を論評している点が非常に残念に感じました。