人類文化の創出する力（創造力）に対して、こちらのほうは「自然人類学」。
いわば人類研究の双璧ながら、後者は差し詰め‘natural history of man’でしょうか。
当方は、サルからヒトへの進化過程（ホミニゼーション）における人脳の固有性をテーマにしています。
体の他の部分に関しては他の動物たちと大差ないのですから、残るは脳しかありません。
容積だけでは計り知れず、もっとなにか機能上の違いがあるに相違ありません。
一例を挙げると、ロボトミーによる分離脳（segregated brain）なるものがあり、
それは左右に分裂しているので、手指の繊細な動きなど両脳が必要な機能については、
うまく遂行できなくなるはずです。本書には、そのヒントになりそうなことも縷々書かれています。
『生きる場の人類学』（河合香吏、京都大学学術出版会）によれば、
人はロカリティ（土地）／自然における認識的実践から表象言語をはじめ、種々の法制度類を鍛え上げ、
小社会構造をなして協力しながら生業を営んできた、即ち暮らしを立ててきたわけであり、
それは文化の故郷を再度自然に還す方法で見直してみようとの趣旨です。
松井健氏（東大東文研）も類似のことを述べています。
当方は、地域に根差した身近な自然認識（理学考）→固有の言語・文化・社会・法制度類の生成
→その抽象化・一般化・普遍化としての「継受」（移植的な受容）という三段階的理解を推奨しています。
この理論からだと、固有の自然から普遍文化が導けるからです。
そんな向きに本書をおすすめとし、試読方ご一考願えれば、と思います。
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