生きものについて研究をしている中村桂子さんが、母校で講演した際の内容を編簿した一冊。
「人間も自然の一部」という目線で繰り広げられる話しの中で、一番おもしろいなと思ったのが「地球に優しく」という言葉に対する中村さんの考えだった。
この言葉は、「人間自身が自分たちのことを特別視している」から生まれる言葉であると。そうではなく、人間も他の動物、虫、植物たちと同じように、大きなサイクルの中で循環している仲間たちである。そのことを忘れてはならないという。
地球の歴史、他の生き物たちとの大きな循環の中に、人間も属している。
そういった視点は今まで持ち合わせていなかったので、新鮮だった。
確かに最近、SDGsやサステナブル、リサイクル、持続可能な社会へみたいな言説を聞かない日はない。その姿勢が悪いわけでは決してないが、それにしても「経済や技術のこと」を最優先して考えているという雰囲気は拭えない。そしてこういう資本主義的な考え方をしている人間が、人間を壊している。
人間優先だった20世紀を省みて、これからに活かしていかねばいけないなと感じた。
個人的に、こういう研究をバックグラウンドに持った起業家とかが日本からもっと生まれてもいいのかなと思ったが、どうなんだろう。
なんとなく、日本では一度社会に出たあとに、再び大学に入り直して研究に励むという経歴を持つ人はそこまで多くないように思う。逆に他の国にはよくいる印象。
だいたいの物質的な欲求が満たされている今現在、これからのビジネスには、こういう研究やサイエンスとの融合がますます必要になっていくと思う。日本人の慣習的にその路線で世界の天才と闘うのは難しいんだろうか。そんなことをこの本を読んで感じた。
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