合意とは何か、合意を形成するとはどういうことか、合意と似ている同意とは何が違うのか・・・。
特定個人の調整能力、コミュニケーション力で片付けられ、属人的になりがちな合意を形成するという分野を、学問として「理論」、「方法」、「実践」の視点でこれまでの知識を体系化した一冊です。
「理論」の部分は、正に学術的な内容です。
今田教授が私見としながらも定義付け※したのを振り出しに、合意の前提となる相互協力の関係性を、ギビング・ゲーム・パラダイム、友達選別戦略、協力状態の進化シミュレーションとして学問的な整理を行っています。
※『相互に脈絡を欠いている意見を纏め、相互に関係付け、意見に調和をもたらすこと』
（当方一部編集）
特に、理論パートでありながら、原科教授が長野県で行った廃棄物処理施設整備の合意形成を事例紹介する箇所は、この本を教科書とせず読み物とする一番有意義な所で、合意形成のプロセス、各段階で何を実践したかなど、学問ではなく応用面で非常に役立ちます。
続く「方法」は、合意形成のモデリング、意味、分類、構造を明らかにし、方法論として討議型意識調査手法を解説しながら、神奈川県が行った道州制をテーマとした討議イベントを実験例として示しています。
また、方法＝Howとなる合意形成の支援ツールについて、要求機能を解き、従来からの問題解決技法のKJ法、視覚化ツールとしてトゥールミンのダイヤグラム、代替案提示の手段ではAHP法やゲーム理論を紹介しています。
面白いのは、ここでインターネットを介した調停教育支援システムという調停員のスキル向上を図るものがある、というのを初めて知りました。
そして「実践」。
ここを一番期待し、遠回りながら「理論」、「方法」と読み経てきた割には失望感が漂います。
社会基盤整備を題材に、合意形成の実践をプロジェクトマネージメントに投影し、PMBOK風に合意形成を5つの要素（知識集合体ではなですが）に分類している展開などは主体逆転が否めません。
リスクマネージメントなどはかなり泥臭い内容です。
但し、合意形成で遭遇する現実的リスクを40個以上も挙げている7ページ分は、常日頃、仕事の場面で遭遇しどう対処すべきかの指針として、正に実践的な箇所だと思います。
このリスクと対応策だけで一冊にすると、学問書からビジネス書として昇華し売れるのではと感じました。
残念感は、続く斐伊川水系の河川整備事業の例、インフォームコンセントを合意形成と捉えた医療での例は、ケース紹介するのでこれ読んで実践を自分で感じ取る・・でしかなく、最後の最も期待したIT化と合意形成は、Wikipediaの解説持論が目立ち、竜頭蛇尾としか言えません。
総約300ページ。大学テキスト風で文字数も多く読破は厳しいですが、カオスティックで情報過多の人々といかに合意形成を成し遂げるかは茶飯事なので、体系立てて理解する今までにない一冊で推薦したいと思います。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
何か問題が発生しました。後で再度リクエストしてください。
よく一緒に購入されている商品
+
+
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
