著者は若手の外交史家だが、その文体は華麗であり、膨大な史料を踏まえた堅実な記述は信頼に足る。
本書によって日本が学ぶべきものは、「外交術」の重要性である。何だそんなことか、で片付けられかねないこの問題は、実は軍事力や経済力といった数字に表れる国力に目を奪われがちな我々によって看過されてきた。しかし、国力が相対的に落ちて行く国家が生き残ろうとする時─ちょうど第二次大戦後のイギリスのように─重要なのは、この力なのである。
その点に注目し、戦後イギリスの国際秩序形成能力の重要性を実証しただけが本書の魅力なのではない。それ以上に読者を引きつけて離さない歴史の意味づけは、事実を並べた「客観的な」研究からは一線を画す一級の歴史家の筆致を意味している。かつての高坂正堯のように老練な外交を愛する政治哲学と、入江昭を思わせる歴史を語る作法が出会った、稀有なイギリス外交史研究書である。
行間からにじみ出る、卓越したベヴィン外交への愛着は、読む者に外交史の面白さを伝えるには十分すぎ、私などは感動してしまった。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
戦後国際秩序とイギリス外交: 戦後ヨーロッパの形成1945年~1951年 単行本 – 2001/11/1
細谷 雄一
(著)
第24回(2002年) サントリー学芸賞・政治・経済部門受賞
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社創文社出版販売
- 発売日2001/11/1
- ISBN-104423710501
- ISBN-13978-4423710500
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
第二次大戦終結からドイツ再軍備と北大西洋条約機構化の合意、そして偉大な政治家アーネスト・ベヴィン英外相の死に至るまでのヨーロッパを、国際秩序形成という視覚から分析する。
登録情報
- 出版社 : 創文社出版販売 (2001/11/1)
- 発売日 : 2001/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 320ページ
- ISBN-10 : 4423710501
- ISBN-13 : 978-4423710500
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,055,393位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 170位ヨーロッパのエリアスタディ
- - 3,922位国際政治情勢
- - 6,952位政治入門
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
1グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。