ネコの視点を借りなければ浮かび上がらない人間社会の内側を軽やかに描いている。その軽やかな文章には幽霊のごとく忍び寄ってくる宗教精神の崩壊という矛盾に苦しむ時代を予感させる何かがある。注釈は本文の理解の助けにはなるが社会学の参考書として読まないならば注釈を読む必要もない。夏目漱石との同時代性は注釈に頼った時代背景を共有することではなく、愛弟子である芥川龍之介が自殺を遂げるまでの延長線上に向かう暗い時代の幽霊を感じることでしか得ることができない。563ページに及ぶ文章も「油尽きて灯自ら滅す。業尽きて何者をか遺す。苦沙弥先生よろしく御茶でも上がれ。」を書くために敷き詰められた枯山水の庭石と思えば面白い。短い文章を書くために長い文章を組み合わせて神秘的な色合いに仕上げた小説にする技巧、それに優れた小説家が文豪である。
それはさておき、先日、新宿区地域文化部文化観光課から「夏目漱石記念施設整備便り」が届いた。夏目漱石の生誕150周年にあたる平成29年2月の開館に向けて記念館を建設する計画らしい。それはそれで一興である。「業尽きて何者をか遺す。」(「吾輩は猫である」より抜粋)
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
夏目漱石全集 (1) (ちくま文庫 な 1-5) 文庫 – 1987/9/1
夏目 漱石
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥990","priceAmount":990.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"990","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"jbpwccFvRmlDG8Dpagi7AO%2FQ%2FNFNso0ULWWDVJfUT0TxAJkHt6DcQO%2B47w%2BbUNqqt4OWd0vWXxhIgyqUGarBuesaC5rFnRJmrNMhjzXbrvJVzepM447OV0e8c2ivrd9W","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}]}
購入オプションとあわせ買い
吾輩は猫である
- 本の長さ573ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日1987/9/1
- ISBN-104480021612
- ISBN-13978-4480021618
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 夏目漱石全集 (1) (ちくま文庫 な 1-5)
¥990¥990
最短で6月4日 火曜日のお届け予定です
残り2点(入荷予定あり)
¥880¥880
最短で6月4日 火曜日のお届け予定です
残り3点(入荷予定あり)
¥880¥880
最短で6月4日 火曜日のお届け予定です
残り4点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (1987/9/1)
- 発売日 : 1987/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 573ページ
- ISBN-10 : 4480021612
- ISBN-13 : 978-4480021618
- Amazon 売れ筋ランキング: - 41,868位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 40位全集・選書 (本)
- - 168位ちくま文庫
- - 350位アート・建築・デザイン作品集
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
(1867-1916)1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。
帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表し大評判となる。
翌年には『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年5月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年1月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
注意。活字が小さいです。小さい文字が辛い人は最新版の漱石全集本で読みましょう。安く入手し、仕事で引用や確認のためにデータとして持っていれば、読めればそれでいい人にはお買い得。コンパクトで装丁も良いです。しかし暇な老人が愛読し、繰り返し読む為のものではござらんのじゃ。
2013年9月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
猫という存在を借りて、漱石が持っている知識をひけらかしながら、冗長に、明治時代の知識人の日常を描いた作品。それが500ページ以上も続く。夏目漱石の作品の中で、唯一よまなくていいものだと、私的に思う。
語り手に猫を採用した意味合いが薄すぎる。一般的に猫に対しては「愛くるしい」とか「かわいい」とか、そういうイメージがあるはずだ。当然読者も、『猫的な愛らしさと小説の融合』、これを予期し期待し読み始めるだろう。
しかし、なぜか作中の猫は滅茶苦茶に博識なのだ。哲学者や経済学者の理論などを軸にしながら風刺をしているのだ。これでは『斬新』ではなく、単に『奇をてらった』だけ。たまに、猫らしいかわいげのある描写もあるが、文字通りたまにである。これでは人間が語り手になっているのと変わりない。
有名無実とはこの作品のこと。読者もレビュアーも、夏目漱石というネームバリューに迎合されないでほしい。
語り手に猫を採用した意味合いが薄すぎる。一般的に猫に対しては「愛くるしい」とか「かわいい」とか、そういうイメージがあるはずだ。当然読者も、『猫的な愛らしさと小説の融合』、これを予期し期待し読み始めるだろう。
しかし、なぜか作中の猫は滅茶苦茶に博識なのだ。哲学者や経済学者の理論などを軸にしながら風刺をしているのだ。これでは『斬新』ではなく、単に『奇をてらった』だけ。たまに、猫らしいかわいげのある描写もあるが、文字通りたまにである。これでは人間が語り手になっているのと変わりない。
有名無実とはこの作品のこと。読者もレビュアーも、夏目漱石というネームバリューに迎合されないでほしい。
2007年11月24日に日本でレビュー済み
サイコー。非常、いやもう、異常に気に入った。
最初は何の気なく読んでいて、それでもやたら諧謔が効いているのが
おかしくておかしくて、こりゃたまらないなーとは思っていたが、
だんだんとさらに突っ込んで「おっ」と思うところが随所に・・
たとえばどうしたらよいだろうと悩んでも知恵が浮かばないときの安心の仕方、
銭湯における人間観察、職業上の逆上の大切さ、それになんといっても
「西洋人のやり方は積極的積極的と云って近頃大分流行るが、あれは大なる欠点を持っている」・・
このあたりの「哲学者」独仙氏のスルドイ弁舌にはこれぞ漱石の本音かとしたり顔で思うのだが、
ところがどっこいそうは問屋が卸さかったりする。
その他、寒月氏のモデルが寺田寅彦であるというのは有名な話で
私もそれくらいは知っているのだがそれくらいしか知らず。
ほかにいったいだれをモデルにしているのかや、数々の引例にどんな背景があるか、
引かれている古今東西不問の文学者や文学の、まあいうなれば薀蓄について、
逐一調べたらこの本、書かれた量の数倍にはなりそう、つまりそれだけの中身。
すでに多くの「猫」論があることは間違いなく、それらを読んでみたいとの興味すらそそられる。
確信犯的な教養のひけらかし、それに対する風刺。
自虐的な要素も多々見受けられ、とにかく興味深い。
もっと早く読みたかった気もするが今だからこそ面白いと思うんだろうと思う。
そうして、そう思ったからにはこの先また何回でも・折々に、触れていきたい極上の「スルメ本」になる(はず)。
きっとそのたびに新しい発見がある(はずだ)!
最初は何の気なく読んでいて、それでもやたら諧謔が効いているのが
おかしくておかしくて、こりゃたまらないなーとは思っていたが、
だんだんとさらに突っ込んで「おっ」と思うところが随所に・・
たとえばどうしたらよいだろうと悩んでも知恵が浮かばないときの安心の仕方、
銭湯における人間観察、職業上の逆上の大切さ、それになんといっても
「西洋人のやり方は積極的積極的と云って近頃大分流行るが、あれは大なる欠点を持っている」・・
このあたりの「哲学者」独仙氏のスルドイ弁舌にはこれぞ漱石の本音かとしたり顔で思うのだが、
ところがどっこいそうは問屋が卸さかったりする。
その他、寒月氏のモデルが寺田寅彦であるというのは有名な話で
私もそれくらいは知っているのだがそれくらいしか知らず。
ほかにいったいだれをモデルにしているのかや、数々の引例にどんな背景があるか、
引かれている古今東西不問の文学者や文学の、まあいうなれば薀蓄について、
逐一調べたらこの本、書かれた量の数倍にはなりそう、つまりそれだけの中身。
すでに多くの「猫」論があることは間違いなく、それらを読んでみたいとの興味すらそそられる。
確信犯的な教養のひけらかし、それに対する風刺。
自虐的な要素も多々見受けられ、とにかく興味深い。
もっと早く読みたかった気もするが今だからこそ面白いと思うんだろうと思う。
そうして、そう思ったからにはこの先また何回でも・折々に、触れていきたい極上の「スルメ本」になる(はず)。
きっとそのたびに新しい発見がある(はずだ)!