同じ著者による『死刑物語『独裁者の研究』、そしてこの『戦争物語』の三部作を読んだが、執筆の姿勢が一貫していて読んでいて好感が持てた。何れも扱っている現象を克服されるべき対象として扱っており、他者を排除し、理性を嫌い、狭量な世界観の中に閉じこもって、非合理的な呪術に主体を委ねようとする個々人の傾向にその最終的な責を負わせようとしてる点で、非常に啓蒙主義的、理想主義的である。その分やや教条主義的で一通り一遍の分析で終わってしまっていると云う不満も有るが、学術的には粗い点も有るものの、読んでいて元気の出る本としてはどの本もお薦め出来る。温和で常識的なコリン・ウィルソンとでも言うべきか。人間の理性に信を置き、歴史の未来に希望を失わない為に、我々はどの様な課題を乗り越えて行かねばならないのかを、明確な、愚直なまでに誤魔化しの無い言葉で語っており、読む者を惹き付ける。三部作を是非通して読んでみて頂きたい。
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