2000年初版。地味な装丁の本で読むのを後回しにしていたが、読み始めたら面白い!歴史においてもそうだった様に、教科書と言う代物はどうも客観的と言うよりは中央政権よりに書かれていて、習った本人も自分を中央政権寄りに置いて歴史観を作ってしまう。この本を読み始めて直ぐに、日本独自の文化が存在!...そうだ、在っても不思議は無い。
『青森県風張遺跡で米を発見した』、とあったが弥生時代の水稲伝来は南から、と言う固定観念が自分の中に出来てしまっていた。本の中で三内丸山遺跡のクリを追いながらそれが少しずつ揺らいで行く。遺跡内のクリ花粉の量は単に近くにクリの木が沢山あった、と言う事では到底説明出来無い量だそうだ。其処から野生のクリの樹を探してDNAを集め始める。何か推理小説を読んでいる様な感覚で読み進んだ。一度クリの樹を認識すると今まで気が付かなかったクリの樹が目に飛び込んでくる、と言う旨の描写があったが、それは山菜摘みと同じだ。人間の眼は一旦認識すると、目標に照準を合わせて来る。
縄文時代にも水稲が、弥生時代のものと異なるらしいが、あったらしい。今まで関心を持たなかった水稲栽培も今私が夢中になっている、正に水耕栽培なのだ、と気付いた。何処で水を切り、登熟させるか、きっとトウモロコシなども2.5葉期、5.5葉期に水を欲しがるなど、モンスーン地帯の植物に見られるキーなのかも知れない。今年は水耕栽培でそれを確かめてみたい。
半栽培にいたってはニワトコや山葡萄、他にもきっとそんな形で人間生活に寄り添って来た植物があるに違いない。今は日本人の生活に定着した生姜や茗荷を古の日本人は好まなかった、と魏志倭人伝にあるそうな。
歴史と言うものは色々な角度から何回も繰り返しお浚いをする事で自分の中に新しい歴史観が生まれて来る。大陸の移動、人間の移動、付随する動植物の移動、とスペクタクルな観点を与えてくれる、刺激的な本だ。人が動いて植物の種も動く。街道の関所が生物線になり、更には東北・北海道の大麦にはロシアへの海路が浮かび上がる。
バナナにも種があるそうな。但し、野生のものに限るらしい。家畜化(ドメスティケーション)により、動物も植物も遺伝子を変え、生態系も変化する。植物にヒトが接する事で、免疫力の活性に繋がる。春の花見は正にソレで、お天道様の光は2ヶ月前から徐々に変わってきてはいるが、外で楽しむ気温ではない。ようやく温度も上がりつつ、日の光も豊かになって来て人間の中の動物を刺激するのだ。
著者は米のDNAを研究されて来た方らしいが、毎日3回頂く米についても読んで見たくなった。淡々とし過ぎず、興味深い語り口が良い。
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縄文農耕の世界: DNA分析で何がわかったか (PHP新書 125) 新書 – 2000/8/1
佐藤 洋一郎
(著)
縄文時代に農耕はあった!? 栽培はいかに行われたか? 最先端のDNA分析を通して農耕弥生起源説を覆し、新たな古代日本像を提示する論考。
農耕文化は従来弥生時代の水田稲作の渡来が起源とされてきた。だが三内丸山をはじめ縄文遺跡で発掘されるクリは栽培されたものではないか? 縄文人は農耕を行っていたのではないか? 著者によれば、「ヒトの手が加えられるにつれ植物のDNAのパターンは揃ってくる」という。その特性を生かしたDNA分析によって、不可能とされていた栽培実在の証明に挑む。
さらに本書では、縄文人の生活にまで考察が及ぶ。植物に縄文人はどのように接していたのか。著者によれば、ヒエ、イネ、マメ、ヒョウタンなどの食物も栽培化され、海上ルートで運ばれていたと推定される。
生物学の視点から縄文農耕に迫ることで、染色を行い、薬草も利用するなど多様な縄文人の姿を発見していく。そこでは、原始的と思われがちな縄文の世界像は崩れ、現代にも通じる豊かな生活が展開される。
定説を実証的に覆した上で、農耕の発達する過程まで述べた、生物学から問う新・縄文農耕論。
農耕文化は従来弥生時代の水田稲作の渡来が起源とされてきた。だが三内丸山をはじめ縄文遺跡で発掘されるクリは栽培されたものではないか? 縄文人は農耕を行っていたのではないか? 著者によれば、「ヒトの手が加えられるにつれ植物のDNAのパターンは揃ってくる」という。その特性を生かしたDNA分析によって、不可能とされていた栽培実在の証明に挑む。
さらに本書では、縄文人の生活にまで考察が及ぶ。植物に縄文人はどのように接していたのか。著者によれば、ヒエ、イネ、マメ、ヒョウタンなどの食物も栽培化され、海上ルートで運ばれていたと推定される。
生物学の視点から縄文農耕に迫ることで、染色を行い、薬草も利用するなど多様な縄文人の姿を発見していく。そこでは、原始的と思われがちな縄文の世界像は崩れ、現代にも通じる豊かな生活が展開される。
定説を実証的に覆した上で、農耕の発達する過程まで述べた、生物学から問う新・縄文農耕論。
- 本の長さ218ページ
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2000/8/1
- ISBN-104569612571
- ISBN-13978-4569612577
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
従来、農耕文化は弥生時代の水田稲作の渡来が起源とされてきた。だが、三内丸山をはじめ縄文遺跡で発掘されるクリは栽培されたものではないか? 生物学から問う新・縄文農耕論。
登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2000/8/1)
- 発売日 : 2000/8/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 218ページ
- ISBN-10 : 4569612571
- ISBN-13 : 978-4569612577
- Amazon 売れ筋ランキング: - 638,742位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 171位農学一般関連書籍
- - 1,572位PHP新書
- - 9,241位生物・バイオテクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
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2014年1月17日に日本でレビュー済み
2001年10月20日に日本でレビュー済み
山内丸山遺跡の発掘により、縄文人の植物栽培は歴史的事実として認められるようになった。遺跡より大量に見つけられたクリやヒエの種子の研究から見つけだされた結論である。とすれば、日本の農耕の始まりは、稲作農耕の九州伝来より3000年以上もさかのぼることになる。
山内丸山のクリは、DNAのパターンが非常にそろっているという。一般の山クリの場合は、そんなにパターンがそろわないものだとされる。また、静岡県坂田北遺跡から出たクリの場合も、そろって大きな実がついていたという。このような結果から、もしかして人間の選別の手が入っているのではなかろうかと考える。
従来は、日本の栽培植物のほとんどは、海外から渡来したものとされてきた。しかしヒエだけは、日本列島原産ではないかとの説があるという。「雑穀のきた道」の著者坂本寧男さんの研究によるのだそうだ。従来は中国渡来と考えられていたが、考古学的にそれを証明する遺物がでていないこと、詩経や本草綱目に記載が無いことから、中国での栽培の歴史が新しいとする。別に研究された札幌大学のグループのアプローチでも、日本原産が裏付けられているという。
ともあれ、縄文農耕の可能性から、日本史の書き換えを迫る衝撃的一冊である。
山内丸山のクリは、DNAのパターンが非常にそろっているという。一般の山クリの場合は、そんなにパターンがそろわないものだとされる。また、静岡県坂田北遺跡から出たクリの場合も、そろって大きな実がついていたという。このような結果から、もしかして人間の選別の手が入っているのではなかろうかと考える。
従来は、日本の栽培植物のほとんどは、海外から渡来したものとされてきた。しかしヒエだけは、日本列島原産ではないかとの説があるという。「雑穀のきた道」の著者坂本寧男さんの研究によるのだそうだ。従来は中国渡来と考えられていたが、考古学的にそれを証明する遺物がでていないこと、詩経や本草綱目に記載が無いことから、中国での栽培の歴史が新しいとする。別に研究された札幌大学のグループのアプローチでも、日本原産が裏付けられているという。
ともあれ、縄文農耕の可能性から、日本史の書き換えを迫る衝撃的一冊である。