父カールの代から、当時の世界情勢や文化史まで詳しく追った伝記で、勿論内面にも深く切り込んでいて非常に読み応えがありました。
「資料をして語らしめ、たぐい稀な一人物の全体像に迫ろうとするモンクの叙述は圧倒的な迫力があり、見事というほかはない。」という書評がありましたが、多くの人が同じ感想を持つと思います。
また他のウィトゲンシュタイン関連本での記述も、この伝記を元にしていることが多いようでところどころニヤリとさせられました。
河出書房新社の「ウィトゲンシュタイン」というムックで、鬼界という人が当時非公開になっていたプライベートな日記などが資料として抜け落ちているためつまらないと言っていましたが、これは完全に誤解で、非公開の資料も特別に閲覧させてもらって吟味した上で書いたとハッキリと後書きにあります。
一般受けも良さそうな内容なのに絶版で文庫本にもなってないのは不思議で残念です。
他の文献でも良く言及されるラッシュ・リーズの回想本「Recollections of Wittgenstein」からの引用も多いのですが、こちらも日本語化されてないのでして欲しいものです。
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ウィトゲンシュタイン 1 単行本 – 1994/11/1
- 本の長さ372ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日1994/11/1
- ISBN-10462203185X
- ISBN-13978-4622031857
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
多様な側面を持つ哲学者ウィトゲンシュタインの全体像に迫る本格的な伝記。あらゆる資料を用いて、ウィトゲンシュタインの情緒的生ならびに精神的生と、その哲学的関心を統合、解明する。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (1994/11/1)
- 発売日 : 1994/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 372ページ
- ISBN-10 : 462203185X
- ISBN-13 : 978-4622031857
- Amazon 売れ筋ランキング: - 737,944位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 629位ドイツ・オーストリアの思想
- - 1,343位西洋哲学入門
- カスタマーレビュー:
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2021年3月30日に日本でレビュー済み
(※一、二巻を通じての感想です)
『論理哲学論考』『哲学探究』などを著したことで有名な哲学者・ウィトゲンシュタインの伝記。この本は、彼の生涯と彼の哲学の結びつきを説明する目的で書かれたもの。小さな文字が二段組でびっしりと印刷された、読み応えのある本だ。しかも、これは全集並みの大型本で、二巻分を合わせると合計700ページ近く(ページ数のふられていない、白黒写真の載せられたページをふくむ)もあるのだから凄まじい。
この本の最大の長所は、本文に取り入れられた情報の大変な充実度だろう。作者はウィトゲンシュタインの著作や遺稿や彼が交わした手紙などを徹底的に調べ、非常に多くの関係者と直接会ったり手紙のやり取りをしたりして取材している。訳者あとがきで〝これほど数多くの資料を集め、可能な限りウィトゲンシュタインの全体像を浮き彫りにしようとした研究を私は知らない〟と書かれるほどだ。
内容についても、すばらしい。ウィトゲンシュタインの波乱に満ちた人生を丁寧に追い、彼の複雑な人間性の魅力を描きだし、それらが彼の哲学とどのように関わってきたのかを、説得力をもって示している。ウィトゲンシュタイン自身による著作や手紙の抜粋もふんだんに挟まれており、この本を読むことで、彼の哲学に対して抱いていた謎が多少なりとも解かれた気がした。また、孤独な人物だと思っていたウィトゲンシュタインが多くの人と関わりを持ち、心温まるような交流もしていた(彼の気難しさによって、その交流が途絶えることも少なくなかったとは言え)という事実が印象深かった。
この本の短所は、訳文の読みにくさだろう。まず、訳語の選択に成功していないと思われる文章がかなり多い。主語(と言うよりは、主語が指し示す人物)のはっきりしない文章や、助詞の使い方などに違和感を覚える文章も多い。また、誤植も少し見られた。訳文が明快であれば、この本からもっと多くの発見を得られただろうので、残念に思う。だが、この長大な著作を訳す作業は大変だったに違いない。その努力に感謝したい。
『論理哲学論考』『哲学探究』などを著したことで有名な哲学者・ウィトゲンシュタインの伝記。この本は、彼の生涯と彼の哲学の結びつきを説明する目的で書かれたもの。小さな文字が二段組でびっしりと印刷された、読み応えのある本だ。しかも、これは全集並みの大型本で、二巻分を合わせると合計700ページ近く(ページ数のふられていない、白黒写真の載せられたページをふくむ)もあるのだから凄まじい。
この本の最大の長所は、本文に取り入れられた情報の大変な充実度だろう。作者はウィトゲンシュタインの著作や遺稿や彼が交わした手紙などを徹底的に調べ、非常に多くの関係者と直接会ったり手紙のやり取りをしたりして取材している。訳者あとがきで〝これほど数多くの資料を集め、可能な限りウィトゲンシュタインの全体像を浮き彫りにしようとした研究を私は知らない〟と書かれるほどだ。
内容についても、すばらしい。ウィトゲンシュタインの波乱に満ちた人生を丁寧に追い、彼の複雑な人間性の魅力を描きだし、それらが彼の哲学とどのように関わってきたのかを、説得力をもって示している。ウィトゲンシュタイン自身による著作や手紙の抜粋もふんだんに挟まれており、この本を読むことで、彼の哲学に対して抱いていた謎が多少なりとも解かれた気がした。また、孤独な人物だと思っていたウィトゲンシュタインが多くの人と関わりを持ち、心温まるような交流もしていた(彼の気難しさによって、その交流が途絶えることも少なくなかったとは言え)という事実が印象深かった。
この本の短所は、訳文の読みにくさだろう。まず、訳語の選択に成功していないと思われる文章がかなり多い。主語(と言うよりは、主語が指し示す人物)のはっきりしない文章や、助詞の使い方などに違和感を覚える文章も多い。また、誤植も少し見られた。訳文が明快であれば、この本からもっと多くの発見を得られただろうので、残念に思う。だが、この長大な著作を訳す作業は大変だったに違いない。その努力に感謝したい。