崇高なテーマであるが著者の文章は平易かつ論理的で読みやすい。人気があるのも頷ける。冒頭に「ショートストーリー」と称したサマリーがあるので、そこだけ読んだとしても大枠の主張は把握できる。
曰く、1960年の米国企業は多角化ブームに沸き、M&Aによって、まるで投資家が証券投資をするように資産管理活動に勤しんでいた。ただこれは本来の「経営」ではない、というのが著者の主張。長期的利益を犠牲にして短期的利益を追求することが蔓延したために、米国の主要産業の多くがダメになったという。
そんな状態の中、日本企業はただひたすら夢中で会社を守り、会社を切り盛りする事に明け暮れていた。愚直な活動ではあるが、これこそが「経営をしていた」のだ。
日本企業の躍進を分析すると、「企業文化」というキーワードが浮かび上がってくる。強い企業文化は、それぞれの国・地域・個人の文化を乗り越えるか、それを修正できる強さを持っている。そして、その強い企業文化を創造し、マネージする事が経営者が行う決定的に重要な仕事なのだ。
企業が成功するためには、MBAホルダーではなく、企業文化を体現している人を評価しなければならない。そして、企業部下を強化・再認識する中で、規制の枠を越えた行動を起こしていくことが必要なのだ。
経営者の仕事でもう一つ重要なことは、「組織」をつくり、それを存続させる事である。これは大変な努力と才能を要する仕事だ。
組織には指針が必要だ。それが「戦略」である。戦略は完璧なものではない。最適性・合理性を犠牲にしてでも、タイミングよく組織の中に組み込んでいくことが重要だ。戦略があればこそ、組織内での競争も可能になり、組織が活性化する。
戦略は「外部環境と内部環境の適合」というが、個々人が都度都度そんな行動をしていたら組織は右往左往してしまう。その意味で、外部環境との間に一線を画すことが重要で、会社制度はむしろそのためにある。一線を画した状態で、自らが主体的に予測し、自らの優先順位に基づいて自律的に行動する。それによって、自社の強みを有効に発揮する事ができるのだ。それをマネージするのが経営者の仕事である。
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経営の再生[新版]―戦略の時代・組織の時代 単行本 – 2003/4/1
高橋 伸夫
(著)
- 本の長さ327ページ
- 言語日本語
- 出版社有斐閣
- 発売日2003/4/1
- ISBN-104641161801
- ISBN-13978-4641161801
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
会社の寿命、多角化戦略、経営者革命、系列など、よく知られた重要なトピックスを紹介しながら、「経営するとは何か?」という問いを何度も繰り返し、経営学の根本にぐいぐい迫る。1995年刊の新版。
登録情報
- 出版社 : 有斐閣 (2003/4/1)
- 発売日 : 2003/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 327ページ
- ISBN-10 : 4641161801
- ISBN-13 : 978-4641161801
- カスタマーレビュー:
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2005年12月19日に日本でレビュー済み
最近著者の「虚妄の成果主義」を読んでみました。成果主義についての評価には頷ける(アマゾンのレビュ−では様々な評価がありますが)ところがあり、同じ著者の本を読んでみたいと思っていたところ本書に辿り着きました。少し古い本ですが、ご興味のある方は本書と「成果主義」を一緒に読まれると、より一層著者の考えが分かると思います。(著者は世間の流れに左右されることなく、一貫した研究態度で経営を見つめています。)
「経営の再生」ということで、第一章「多角化戦略」から第八章「企業・戦略の組織論」まで、世間で言われていることを検証しています。例えば、ポ−トフォリオで経営するという「常識?」に対しては、PPMでは「負け犬」となる事業が逆に勝ち犬になった例(P.65)とか、アメリカにおけるホンダの有名な成功例(某コンサルテイング会社の分析とは逆!で、かのミンツバ−グも「戦略サファリ」で引用)など、「常識」に棹差す貴重な意見が多数あります。因みに著者が本書の新版を出すときには、ミンツバ−グの「日本企業は戦略のイロハをポ−タ−に教えたら?」(「戦略サファリ」P.124)を付け加えると良いのではと思います。勿論「常識」に疑問を投げかけている訳ですから、読者も「常識」の何たるかは知っておく必要があるでしょう。
最後に一言。著者の「経営する」とは何なのか、には多くの点で同調しますが、もう少し原理・原則の説明を少なくして具体的な例(一般的に言われていることの間違い・考え違いを指摘)を増やすともっと魅力のある本になると思います。
「経営の再生」ということで、第一章「多角化戦略」から第八章「企業・戦略の組織論」まで、世間で言われていることを検証しています。例えば、ポ−トフォリオで経営するという「常識?」に対しては、PPMでは「負け犬」となる事業が逆に勝ち犬になった例(P.65)とか、アメリカにおけるホンダの有名な成功例(某コンサルテイング会社の分析とは逆!で、かのミンツバ−グも「戦略サファリ」で引用)など、「常識」に棹差す貴重な意見が多数あります。因みに著者が本書の新版を出すときには、ミンツバ−グの「日本企業は戦略のイロハをポ−タ−に教えたら?」(「戦略サファリ」P.124)を付け加えると良いのではと思います。勿論「常識」に疑問を投げかけている訳ですから、読者も「常識」の何たるかは知っておく必要があるでしょう。
最後に一言。著者の「経営する」とは何なのか、には多くの点で同調しますが、もう少し原理・原則の説明を少なくして具体的な例(一般的に言われていることの間違い・考え違いを指摘)を増やすともっと魅力のある本になると思います。