女性の研究者がナチの売春政策について、多くの研究書、文献、そしてインタビューによって調べ上げたのを纏めた一冊。
著者が女性ということもあって心なしか女性寄りの感想が見受けられるような気がするが、極力中立を貫こうとする姿勢は見られる。
ナチなんて残虐非道なことしてるんだろう、と思って読んでみると、少なくとも売春に関しては良心的(?)と言える。
場末のソープなんかよりも客となる男性のニーズを満たそうと努力しているし、スタッフとなる女性囚人の肉体作りも行なっており、少なくとも売春従事当初は、それまでげっそりしていた女性も健康状態である。
勿論、彼らに「用済み」の烙印を押された人物に対しては良心など微塵も垣間見れたものではないが。
数多くのインタビューや、抑留者のドキュメントから、当時の強制売春について男女両方の視点から考察している。
現代日本でもそうであるように、当時売春に従事していた人に対する風当たりは厳しい。その事に対する著者の憤りが伝わってくる。
従軍慰安婦問題を契機に著されたのは本書だけではない。それまで収容所内でいかなる性行為がなされてきたかなど誰も知ろうとしなかったのだから。
真実か虚実かはともかく、従軍慰安婦問題の歴史的意義は大きい。
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ナチズムと強制売春 単行本 – 1996/5/15
クリスタ パウル
(著)
- 本の長さ207ページ
- 言語日本語
- 出版社明石書店
- 発売日1996/5/15
- ISBN-104750308048
- ISBN-13978-4750308043
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ナチスは強制収容所囚人やSS隊員、兵隊用に特別に売春宿を設置し、女性の囚人を強制的に卑しめた。これまでタブー視されてきたナチスの性犯罪に真正面からとり組む。
登録情報
- 出版社 : 明石書店 (1996/5/15)
- 発売日 : 1996/5/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 207ページ
- ISBN-10 : 4750308048
- ISBN-13 : 978-4750308043
- Amazon 売れ筋ランキング: - 633,245位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2012年2月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
強制されていた人を探し出してインタビューするだけでも
大変だったはずです。
大変だったはずです。
2013年10月16日に日本でレビュー済み
兵士の忠誠心を維持し、性病等による戦力低下を防ぎ、戦闘に駆り立てる。
また、兵士の一般民衆への暴力を抑制し、占領政策を潤滑に進める。
このために、兵士の性欲のはけぐちとして「売春」を管理する「売春宿」を運営する。
兵士の効率的運用と占領政策の合理性から、「売春」の管理は戦争と不可分一体のものです。
本書は、こうした「売春」行為や「売春宿」の運用をナチスドイツはどのように行ったかを主軸
にしつつ「売春」の主体である女性の置かれた立場、行為に至る経過を追いながら実態を暴き
出しました。
それも、ことは「兵士」だけのことではないことも。
かつて、ナチス=悪、ユダヤ人や占領下の民衆=被害者という単純化された図式で語られつづけ
た歴史の中で隠蔽され埋没させられた事実が赤裸々に述べられます。
ナチスの描く理想的国民像から外れる女性のカテゴリの一つであったドイツ人売春婦は、矯正の
視点から強制収容所に送致され、「労働としての売春」に従事させられた事実。
ユダヤ人(強制・絶滅)収容所のユダヤ人女性から「自発」を強要する方法で「労働としての売
春」に従事させられた事実。それも、同じユダヤ人収容者の「褒美」のために。
売春に同意しなければ、殺害されることが明らかにわかる状況下で、唯一の選択として売春を選
ぶ女性。一方で、良い生活条件を求めて本当に自ら進んで売春宿に赴く女性たちの存在。
こうした事実を著者は、主導したナチス機関の公文書や実際に売春に従事した本人からの聞き取
りを元に組み立てていきます。
そこに描きだされたのは、ナチスドイツの官僚機構が生み出した巧妙な組織管理、人心掌握法
のみならず、ナチスに対する単純化した図式を覆す事実であるが故に、戦後政府から隠蔽され、
蔑まれ、補償も受けられなかった女性たちの悲劇でした。
本書のタイトル「強制売春」は、「従軍慰安婦」等に代表される「兵士」と女性の関係性だけ
ではない、被抑圧者(被占領国民や収容所収監者)まで含めた状況を表すにあって、正鵠を射
た言葉の選択です。
また、兵士の一般民衆への暴力を抑制し、占領政策を潤滑に進める。
このために、兵士の性欲のはけぐちとして「売春」を管理する「売春宿」を運営する。
兵士の効率的運用と占領政策の合理性から、「売春」の管理は戦争と不可分一体のものです。
本書は、こうした「売春」行為や「売春宿」の運用をナチスドイツはどのように行ったかを主軸
にしつつ「売春」の主体である女性の置かれた立場、行為に至る経過を追いながら実態を暴き
出しました。
それも、ことは「兵士」だけのことではないことも。
かつて、ナチス=悪、ユダヤ人や占領下の民衆=被害者という単純化された図式で語られつづけ
た歴史の中で隠蔽され埋没させられた事実が赤裸々に述べられます。
ナチスの描く理想的国民像から外れる女性のカテゴリの一つであったドイツ人売春婦は、矯正の
視点から強制収容所に送致され、「労働としての売春」に従事させられた事実。
ユダヤ人(強制・絶滅)収容所のユダヤ人女性から「自発」を強要する方法で「労働としての売
春」に従事させられた事実。それも、同じユダヤ人収容者の「褒美」のために。
売春に同意しなければ、殺害されることが明らかにわかる状況下で、唯一の選択として売春を選
ぶ女性。一方で、良い生活条件を求めて本当に自ら進んで売春宿に赴く女性たちの存在。
こうした事実を著者は、主導したナチス機関の公文書や実際に売春に従事した本人からの聞き取
りを元に組み立てていきます。
そこに描きだされたのは、ナチスドイツの官僚機構が生み出した巧妙な組織管理、人心掌握法
のみならず、ナチスに対する単純化した図式を覆す事実であるが故に、戦後政府から隠蔽され、
蔑まれ、補償も受けられなかった女性たちの悲劇でした。
本書のタイトル「強制売春」は、「従軍慰安婦」等に代表される「兵士」と女性の関係性だけ
ではない、被抑圧者(被占領国民や収容所収監者)まで含めた状況を表すにあって、正鵠を射
た言葉の選択です。
2013年9月12日に日本でレビュー済み
石川康弘さんに教えて戴いた本。
軍が指揮して作った“慰安所”は、日独しかない。
独では、強制労働の労働効率を高める為囚人用に、同性愛阻止・性病の蔓延防止・兵士の士気を維持・高揚させるために兵士用に、「ドイツ人」女性との接触を避けさせる為に外国人強制労働者用にと、目的別に何種類も作られ、体制に対する忠誠心を促す為の懐柔策として運営された。
日のそれとは女性の待遇などで異なる点も多いが、女性の大半は収容所内で低い地位にあり、男の性的欲求が、女性の肉体を踏み台に社会機構と権 力機構を安定させる為の機能を担わされた点は、今も続く問題とされよう。
被害者が十分な補償を受けられていない点も然り。
被害者数は少なく見積もっても3万5千人はいるはずだが、独でも本件は触れられたくない過去として扱われている。
軍が指揮して作った“慰安所”は、日独しかない。
独では、強制労働の労働効率を高める為囚人用に、同性愛阻止・性病の蔓延防止・兵士の士気を維持・高揚させるために兵士用に、「ドイツ人」女性との接触を避けさせる為に外国人強制労働者用にと、目的別に何種類も作られ、体制に対する忠誠心を促す為の懐柔策として運営された。
日のそれとは女性の待遇などで異なる点も多いが、女性の大半は収容所内で低い地位にあり、男の性的欲求が、女性の肉体を踏み台に社会機構と権 力機構を安定させる為の機能を担わされた点は、今も続く問題とされよう。
被害者が十分な補償を受けられていない点も然り。
被害者数は少なく見積もっても3万5千人はいるはずだが、独でも本件は触れられたくない過去として扱われている。