日本の都市における中心市街地活性化を、さまざまな統計資料や国内外の事例研究を交えて論じています。単なる理想論やキャッチフレーズに終わることなく、商店街活性化の成功例・失敗例を、データに基づいてきわめて緻密に分析し、科学的見地から結論を導き、さまざまな提言を行っているところが、本書の最大の特徴です。
本書のもうひとつの大きな特徴は、欧米における都市づくりの実践事例について、著者自身の取材に基づく、臨場感あふれるリポートがなされていることです。著者自身の筆によるイラストやスケッチもすばらしく、著者の目に映った都市の魅力が伝わってきます。
中でも、本書で著者が最も注目しているのが、米国アイダホ州ボイジー市の事例です。ボイジーはハイテク産業の台頭による経済発展のために、1990年代に著しい人口増加が続いていますが、成長がもたらす歪みを避けるため、「成長管理」の思想に基づく綿密な都市デザインが策定され、それによって、自然豊かでゆとりある環境が保たれ、質の高い市民生活が実現されています。本書の第10章では、ボイジーの都市デザインの解説とともに、ボイジーの住環境のすばらしさと生活の質の高さを紹介するエピソードがふんだんに盛り込まれています。
全国各地で行われている「都市再生」の実際例と、ボイジーをはじめとする欧米の成功事例を見比べると、そこから何が見えてくるでしょうか… 商店街活性化に実際に取り組む政策担当者や商店街関係者の方々はもちろん、一市民として商店街の理想像を考えてみたい方、そして、国内外の先進的な町づくりの事例を学びたい方に、本書をおすすめします。
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