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美術史の基礎概念: 近世美術における様式発展の問題 単行本 – 2000/9/1

4.5 5つ星のうち4.5 4個の評価

商品の説明

内容(「MARC」データベースより)

美術史の深層をなす視覚の発展史を辿る。西欧の盛期ルネサンスとバロックの美術を対象に、様式の発展に注目した形式分析=フォーマリズムの方法論の原点。新しい人間研究に向けたメッセージ。古典となった名著を新訳で。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 慶應義塾大学出版会 (2000/9/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2000/9/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 448ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4766408160
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4766408164
  • カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本

2013年12月15日に日本でレビュー済み
「基礎概念」の対象は十六世紀(盛期ルネサンス)と十七世紀(バロック)の美術である。ヴェルフリンは様式発展が目立たない過渡期の間に進行すること、歴史がすべて過渡期であることを熟知していたが、「知的な自己保存の要請」によって、十六世紀と十七世紀を「様式の単位」とする。

ヴェルフリンの「様式」概念は、芸術作品として外的に現出した可視的なものだけでなく、水面下の不可視的な層まで包含する。下部の層をなすものは視覚形式、直観形式、あるいは表象形式である。視覚形式は一つの時代の芸術的表現の規定として普遍的に存在し、時代の推移と共に変化する。それぞれの芸術家は自分を拘束するある種の「視覚的」可能性を知っている。すべてのことがすべての時代に可能ではない。視覚そのものがそれなりの歴史をもつ。この「視覚的な層」の暴露こそが、美術史の最も基本的な課題と見なされなければならない。それゆえ、美術史は「西欧的視覚の発展史」となるのである。

様式発展には一定の法則がある。人は常に自分が見たいようにみているのだとしても、このことはあらゆる変遷の中で一つの法則が作用している可能性を排除しない。たとえば十六世紀から十七世紀への様式発展は、五対の概念によって定式化される。すなわち、(1)線的(彫塑的)から絵画的へ。(2)平面的から深奥的へ。(3)閉じられた形式から開かれた形式へ(構築的から非構築的へ)。(4)多数的統一性から単一的統一性へ。(5)絶対的明瞭性から相対的明瞭性へ。人はこの形式において自然を見るのであり、芸術はこの形式においてその内容を表現するのである。ヴェルフリンは五対の概念を比喩的に「容器」と呼んだ。五対の概念はいわば容器のようなものであって、その中に現実界の内容が受け取られ、形を得るわけである。視覚形式の段階まで掘り下げると、そこにはまだ具象的対象は現われていない。「把握と表現の形式」にすぎない五対の概念は、「無表出的」でさえある。ヴェルフリンはこれを「人名なき美術史」と呼んだ。美術史の匿名化は、個々の芸術家の心理の「下部」に超個人的・普遍的な層が存在する事実を言うためである。「基礎概念」の特殊な課題は芸術作品の分析ではない。芸術家や芸術作品を例証にあげるのは、それから様式発展の方向が判断されるからである。

「ここで叙述されたのは、クラシックの型とバロックの型との対比における、この直観形式の変化である。われわれが分析しようとしたのは、十六世紀の美術と十七世紀の美術ではなく...図式、すなわち、美術がどちらにしてもその範囲にとどまり、とどまらざるを得なかった視覚的ないし造形的可能性にすぎない。実例をあげようとすれば、当然ながら、われわれは個々の芸術作品を引き合いに出す以外に仕方がなかったのであるが、とにかくラファエッロとティツィアーノについて、またレンブラントとベラスケスについて述べられたことはすべて、一般的な進路を示すだけでよいのであり、取り上げた作品の特殊な価値を明らかにするはずはなかった。…しかし、他方では、重要なものだけを引き合いに出すことは避けがたいことである。結局は、進行方向はほんとうの先導者となった最も傑出した作品から、最も明白に読み取られるからである。」

「人名なき美術史」はヴェルフリン批判の標的の一つとなった。批判する人は美術史で価値があるのは何はともあれ人格であり、創作する主体を排除すれば美術史は貧困になり、歴史の代わりに血の気のない図式が現われるであろうと。
11人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2005年6月20日に日本でレビュー済み
クラシックからバロックへの発展を5つの対概念として提示したヴェルフリンの代表作。それまでの美術史の方法論に対する意義を唱え、新たな方法論を提示しようとする意欲作。ヴェルフリンは、従来の様式概念を個人の気質(もしくは時代的気分、民族的気分)の表出にすぎないとし、これでは芸術家の気質の分析はできても、芸術作品の成立については説明できないと考えた。そこで、近代的視覚の成立を芸術学の最も根本的な課題として示すべく、本書が書かれたのである。
であるから、本書はまず第一に、新たな方法論の実践として読まれるべきであり、クラシックとバロックを5つの対概念のもとに分類し理解するというのは本末転倒である。ヴェルフリンの方法論的特徴は、美術作品の形態的特徴を徹底的に分析し、それらの特色がそれ自身の内的必然性によって変遷すると考える点にある。アロイス・リーグルとは異なり、ヴェルフリンは美術作品を生んだ社会的背景や思想との関連をあまり問題としない。
「視覚的な層の暴露」という課題を前に、ヴェルフリンは<絵画>を中心に論を展開している。『建築心理学序説』(1886)、『ルネサンスとバロック』(1888)の二作が<建築>を主題としていたのに対し、本書(1915)では主題が<絵画>へと移行しているのである。これは、前二作が心理学的考察法に依拠し、人間の身体的要因に重点を置いていたのに対し、本書では視覚的な効果が大きく取り上げられるようになったためであると考えられる。
ヴェルフリンは対象の分析から、様式発展は「人間の精神構造の法則性」(本文中では「装飾的感情」として示される)に基づくものとし、クラシックからバロックへの発展は、本書の分析対象となる16世紀と17世紀のみならず、それぞれの時代にこの発展段階を見出せると考えた。ヴェルフリンの方法論と様式観を知る恰好の書といえる。
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