オディロン・ルドンを岐阜県美術館で観て以来気になっていましたが、今回「もっと知りたい」シリーズに収録されました。著者が岐阜県美術館学芸部長山本敦子氏で、監修が三菱一号館美術館館長高橋明也氏ですから、それだけで内容の確かさは保証されたようなものでしょう。
三菱一号館美術館所蔵「グラン・ブーケ」が52ページに鮮やかな色彩を披露してあり、高橋氏の解説も参考になりました。次ページにはこの「グラン・ブーケ」の修復過程中での発見が記されており、ルドンの技法を解明していました。
黒の画面が大半の時代から象徴派として豊かな色彩を帯びた作風への変化の過程が本書で伺えます。ゴーギャンを始め多くの画家との交友録、家族との関わり、そして評価の高まりとともに増える装飾画の大作などを本書で理解できると思います。
あとがきで、筆者の山本さんが「この分かりにくさが実は、ルドンの最大の魅力だと思う」との言葉は重要な捉え方でしょう。
あまり知られていないルドンを我が国でしっかりと知らしめることができる書籍だと評価しています。
本書の内容です。
オディロン・ルドン─夢をつむぐ力〈高橋明也〉
序章─荒地の子ども時代〜ルドンの原風景 1840-1850年（0-10歳）
【もっと知りたい１】ルドンの生きた時代の美
エチュードの時代〜ボルドーとパリの日々 1851-1869年（11-29歳）
【もっと知りたい２】ルドンの美の源泉
黒の時代〜異形のものたちとの対話 1870-1888年（30-48歳）
◎傑作クローズアップ1─〈石版画集『エドガー・ポーに』〉
【もっと知りたい3】「ルドンと文学者たち」
★コラム：画家の妻、カミーユ 顕微鏡、天体望遠鏡の進化 「シン・アプリケ」とは？ 最後となった印象派展
闇から光のなかへ〜黒との決別 1889-1898年（49-58歳）
◎傑作クローズアップ2─《眼をとじて》
★コラム：ルドンの作品を愛したゴーギャン ペイルルバード荘園はいま？
色彩との結婚〜パステルが奏でる夢幻 1899-1916（59-76歳）
◎傑作クローズアップ3─《グラン・ブーケ》
修復のアトリエから
【もっと知りたい4】官能的なルドンの花〜花の絵の系譜
【もっと知りたい5】比べて分かるルドンの神話画
【もっと知りたい6】ルドンの装飾画
◎傑作クローズアップ4─フォンフロワド修道院図書室装飾壁画
【もっと知りたい7】ルドンと音楽
★コラム：神話の背景―アポロン 神話の背景―オルフェウス 神話の背景―パンドラ
あとがき〈山本敦子〉
ルドンに出会えるおもな美術館
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