本巻は、大きくふたつに分けることができる。
第一章から第十五章までの<時事放談>ふうのセクションと、第十六章から第十九章までの<古典を読み直す>というセクションだ。
渋谷陽一氏が責任編集をする季刊総合雑誌「SIGHT」に掲載されたのは、<古典を読み直す>のほうが先であった。
それが4回の連載で打ち切りになり、5回目からは<時事放談>に衣替えしている。
全体的な感想を述べれば、前者は「読書漫談」、後者は「床屋政談」といった趣きで、上巻にも増して散漫な印象が残る。
吉本さんの言葉をこういうかたちで遺してくれるのはありがたいのだが……まあ、熱烈な<吉本ファン>でなければ読まなければならない<吉本文献>ではない、というべきだろう。
二、三、気になった言葉を引いておくと――例の9・11の同時多発テロに関して。
《【当時の小泉首相が】第一番にやることは、【テロとの戦いに協力すると声明することではなく】日本人にもテロの犠牲者がいたわけですから、それは日本国の政治責任者として、こういうけしからんことを自分らもされたんだから謝罪と賠償をただちにしない限りは自分たちの行動も保留にするぞって……》(130ページ)
日本人のルーツに関して。
《今より十万年ぐらい前に東南アジアとか、南中国から渡ってきた日本人っていうのは要するに韓国人と同じですよ。それが朝鮮半島に取りつくか、日本列島に取りつくかはね、そんなのは勝手ですからね。つまり東南アジア、南中国みたいなのは、なんて言いますか、東アジアの人種的な根拠地のひとつなんですよね》(163ページ)
小林秀雄賞を受賞した講演『夏目漱石を読む』の文体について。
《こういうものを普通の調子で喋ると、なんとなく間が抜けているっていうか、つまり……本当に本気になってお喋りしたっていう、そういう文体にはならないんですよ。活字にしてみると間が抜けた、山もなければ谷もないみたいな、そういうものになっちゃう。そうはしたくなくてね。なんとかして、喋っててもなんとなく、こう、「文学」になってるぜ、みたいなものにするにはどうしたらいいか、みたいなことを考え始めた頃なんですよ》(278〜9ページ)
吉本さんの自在なおしゃべりを愉しむ本、と評すべきか。
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吉本隆明、時代と向き合う: 吉本隆明が最後に遺した三十万字下巻 単行本 – 2012/12/1
吉本 隆明
(著)
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- 本の長さ407ページ
- 言語日本語
- 出版社ロッキング・オン
- 発売日2012/12/1
- ISBN-104860521129
- ISBN-13978-4860521127
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登録情報
- 出版社 : ロッキング・オン (2012/12/1)
- 発売日 : 2012/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 407ページ
- ISBN-10 : 4860521129
- ISBN-13 : 978-4860521127
- Amazon 売れ筋ランキング: - 918,742位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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戦争は勝っても負けても駄目、と言い切る吉本に強く共感する。
彼が生きていたら、今の北朝鮮、中国とどう付き合うのか訊いてみたかった。
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2019年10月17日に日本でレビュー済み
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なぜ吉本隆明は
戦後最大の思想家と呼ばれるのか。
吉本隆明の著作の特徴は、
何よりも誤謬があれば、
どんな読者にも論理的に
それを指摘することができ、
どんな読者も、
その著作を土台にして、
それを改作し、修正し、
展開できる対象としての
客観性をもっていることだ。
『言語にとって美とはなにか』で
吉本隆明はそう言っている。
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『言語にとって美とはなにか』で
吉本隆明はそう言っている。