ライプニッツ著作集第II期分が出ると最初聞いたときは、また10冊くらい出るのか、さすが工作舎!と期待した。しかし、この第II期第1巻を読んで、結局3巻で終わりだということが判明してがっかり。これでは、中途半端なシリーズになると危惧した。すでに書評を書いた第1巻はそれなりに有意義だったのだが、この第2巻はかなり微妙だ。理由は簡単、法学、神学、歴史学と3つの重要な分野を一冊だけですまそうというプランに無理がある。もちろん、本邦初訳が公開されるのはありがたい。しかし、1667年から1714年に渡る三分野の著作からの限られた抜粋となり、焦点が分散している恐れあり。
まず、法学はどうか。評者の感触では、自然法と正義の話題に焦点を絞り込んで文献を選ぶほうがよかったのではないかと感じた。ライプニッツの立場では、法学は神学を前提する。端的に言えば、最善世界たるモナド界は無時間で存在するのだから、神が人間に対して開示する「自然法」は、現世だけでなく人類の歴史全体に及ぶ規範であるはず。この点をはっきりさせるためには、法学の文献に先立って、その前提となるべき神学の理解が必要なはずである。ところが、この第II巻では、法学のあとに神学が来る構成となっており、多くの読者は出鼻をくじかれるだろう。いずれにせよ、神学の前提のもとでの法学の核心部分は、ライプニッツの自然法論だと見るべきだろう。ライプニッツの「正義」は現世だけでは完結せず、死後の応報まで必要とする。人間にとっての最善世界は、死後の世界まで見渡さなければ見えない。したがって、論理的に鋭敏な読者なら、第2部の神学から読み始めるべきだと感じるに違いない。
では、その神学の部分はどうか。評者は、M. R. Antognazza の最新伝記(2009年)を読み、「カトリック的論証」でライプニッツのヴィジョンが生まれたという指摘に感銘を受けた。ところが、今回の邦訳ではこの著作の訳がないどころか、言及さえわずかしかない。もちろん、諸学の統合や「普遍学」には、テキストや解説でふれらているが、ライプニッツの「形而上学」との関連にはほとんど触れられない。それが大きな不備だと感じた。晩年の「モナドロジー」によれば、モナド界がすべての大元なのだから、諸学の統合や普遍学の要請はライプニッツにとって必然であるはず。そして、人間にとっては歴史の時間経過とともに開示されてくる最善世界は、神学的背景のもとで『人間のなすべきこと」も要求する。それが自然法ではないのか。そういった筋書きが垣間見えるようなセレクションにしてほしかったというのが評者の勝手な要望である。
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ライプニッツ著作集 第II期 第2巻 法学・神学・歴史学 単行本 – 2016/10/10
ゴットフリート・W・ライプニッツ
(著),
酒井潔+佐々木能章
(監修)
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今年、没後300年を迎える哲人・ライプニッツ。
政治的、宗教的混迷の度を深めた17、8世紀ヨーロッパにおいて、宮廷顧問官として活躍しながら、
広範かつ深遠な思想を究めた。正義や宗教的平和についての省察、歴史学の方法論など、
共に至福へといたる道をさぐる思考プロセスの全体像が、時空を超えて鮮やかに甦る。
収載著作および書簡は、すべて本邦初公開!
【目次より】
第1部 法学
1 法学を学習し教授する新方法[1667]
第二部 法学のみに限定された特殊部
コラム*『法学を学習し教授する新方法』第一部について
2 自然法の諸要素[1669 – 70?]
2−1 覚書
2−2 研究
3 王子の教育についての書簡[1685 – 86]
4 普遍学への序言。ユートピア的な島について[1688?]
5 善意に満ちた聡明な人々に宛てた覚書[c.1692]
6 正義の共通概念についての省察[1703?]
他人の立場[1679?]
7 サン・ピエール師の恒久平和計画にかんする所見[1715]
第2部 神学
1 哲学者の告白[1672/73?]
2 宗教の平和について[c.1691]
3 ボシュエとの往復書簡[1692]
コラム*教会再合同計画の背景
3−1 ライプニッツからボシュエへ
3−2 ボシュエからライプニッツへ
3−3 ボシュエからライプニッツへ
3−4 ライプニッツからボシュエへ
コラム*和解交渉のゆくえ
4 ウィーン講演──聖なる哲学者の創始者としてのギリシア人について[1714]
第3部 歴史学
1 ヨハン・アンドレアス・ボーゼ宛書簡[1670]
2 新アプローチ──諸学問の完成と人間の幸福のための歴史学[1686]
3 国際法史料集成序文[1693]
4 歴史学の対象、歴史、方法について[1695/96]
総解説 ライプニッツの法学、神学、歴史学
ライプニッツ〔&ボシュエ〕手稿 272[別丁]
政治的、宗教的混迷の度を深めた17、8世紀ヨーロッパにおいて、宮廷顧問官として活躍しながら、
広範かつ深遠な思想を究めた。正義や宗教的平和についての省察、歴史学の方法論など、
共に至福へといたる道をさぐる思考プロセスの全体像が、時空を超えて鮮やかに甦る。
収載著作および書簡は、すべて本邦初公開!
【目次より】
第1部 法学
1 法学を学習し教授する新方法[1667]
第二部 法学のみに限定された特殊部
コラム*『法学を学習し教授する新方法』第一部について
2 自然法の諸要素[1669 – 70?]
2−1 覚書
2−2 研究
3 王子の教育についての書簡[1685 – 86]
4 普遍学への序言。ユートピア的な島について[1688?]
5 善意に満ちた聡明な人々に宛てた覚書[c.1692]
6 正義の共通概念についての省察[1703?]
他人の立場[1679?]
7 サン・ピエール師の恒久平和計画にかんする所見[1715]
第2部 神学
1 哲学者の告白[1672/73?]
2 宗教の平和について[c.1691]
3 ボシュエとの往復書簡[1692]
コラム*教会再合同計画の背景
3−1 ライプニッツからボシュエへ
3−2 ボシュエからライプニッツへ
3−3 ボシュエからライプニッツへ
3−4 ライプニッツからボシュエへ
コラム*和解交渉のゆくえ
4 ウィーン講演──聖なる哲学者の創始者としてのギリシア人について[1714]
第3部 歴史学
1 ヨハン・アンドレアス・ボーゼ宛書簡[1670]
2 新アプローチ──諸学問の完成と人間の幸福のための歴史学[1686]
3 国際法史料集成序文[1693]
4 歴史学の対象、歴史、方法について[1695/96]
総解説 ライプニッツの法学、神学、歴史学
ライプニッツ〔&ボシュエ〕手稿 272[別丁]
- 本の長さ448ページ
- 言語日本語
- 出版社工作舎
- 発売日2016/10/10
- ISBN-104875024770
- ISBN-13978-4875024774
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商品の説明
出版社からのコメント
ライプニッツ著作集
『ライプニッツ著作集』第I期(全10巻)は、厖大かつ断片的であった原典から、
10年余をかけて総合的に編纂して主要著作を編んだ、世界初の本格的著作集。
ライプニッツ学の世界的泰斗や科学史家、宗教学者などが監修・翻訳を担当。
1999年度日本翻訳出版文化賞受賞。
『ライプニッツ著作集』第I期(全10巻)は、厖大かつ断片的であった原典から、
10年余をかけて総合的に編纂して主要著作を編んだ、世界初の本格的著作集。
ライプニッツ学の世界的泰斗や科学史家、宗教学者などが監修・翻訳を担当。
1999年度日本翻訳出版文化賞受賞。
著者について
1646年~1716年。
「天才の世紀」と謳われる17世紀ヨーロッパで、哲学者、科学者、歴史家、外交官として活躍。
微積分や二進法の考案、計算機の発明、新・旧教会の統合への試みなど、業績は多岐にわたる。
「天才の世紀」と謳われる17世紀ヨーロッパで、哲学者、科学者、歴史家、外交官として活躍。
微積分や二進法の考案、計算機の発明、新・旧教会の統合への試みなど、業績は多岐にわたる。
登録情報
- 出版社 : 工作舎 (2016/10/10)
- 発売日 : 2016/10/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 448ページ
- ISBN-10 : 4875024770
- ISBN-13 : 978-4875024774
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,048,680位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 28,918位哲学・思想 (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2016年10月19日に日本でレビュー済みAmazonで購入