どんな対象であっても、科学的な解釈には幾つもの捉え方があるのは間違いない。
純粋に科学者間で行う論争であっても相容れないことがあるはずだが、客観的なデータの分析や検証によって時間を掛ければ収束していくのが正しい姿であろう。
どんな物事であっても、確からしいとは言えても、確実にそうだとは、言いにくいことが科学の特徴であり、この特徴がしばしば科学に携わっていない人々から曖昧だと捉えられてしまう。難しいことが解らないから、白黒はっきりさせろと。
御用学者と呼ばれるのは、科学者でありながら、この科学の特徴を巧みに操り、科学を道具として使う学者のことであるようだ。
大きな既得権益を持つ組織の方を持つ学者もさることながら、結局は意図的に混乱を巻き起こしてまで時間稼ぎをしようとする側が最も性質が悪いということなんだろう。
とすれば本書のターゲットは学者だけではないはず。時間稼ぎをしてでも利益を逃すまいとする企業や政府ではないのか。
上巻ではそこまで突っ込まれてはいない。下巻でどのような展開になるのか期待をしたいが果たして。
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世界を騙しつづける科学者たち 上 単行本 – 2011/12/15
ナオミ・オレスケス+エリック・M・コンウェイ
(著),
福岡洋一
(翻訳)
- 本の長さ313ページ
- 言語日本語
- 出版社楽工社
- 発売日2011/12/15
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- ISBN-104903063526
- ISBN-13978-4903063522
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商品の説明
著者について
カリフォルニア大学サンディエゴ校教授。専門は科学史。『サイエンス』誌に掲載された“Beyond the lvory Tower”(象牙の塔を超えて)は、地球温暖化否定論に対する戦いの里程標となった。著書に、The Rejection of Continental Drift: Theory and Method in America Earth Science(大陸移動の否定ーー米国の地球科学研究における理論と方法)、Oxford University Pressなどがある。
NASAジェット推進研究所(JPL)の研究員。Atmospheric Science at NASA: A History(NASAの大気科学ーーある歴史)など、4冊の著書がある。
1955年生まれ。大阪大学文学部卒(英語学)。翻訳者。訳書に、『ビーイング・デジタル』(アスキー)、『複雑系を超えて』(アスキー、共訳)、『古代文明の謎はどこまで解けたか I?III』(太田出版)、『懐疑論者の辞典(上下)』(楽工社、共訳)、『幻想の古代史(上下)』(楽工社)など。
NASAジェット推進研究所(JPL)の研究員。Atmospheric Science at NASA: A History(NASAの大気科学ーーある歴史)など、4冊の著書がある。
1955年生まれ。大阪大学文学部卒(英語学)。翻訳者。訳書に、『ビーイング・デジタル』(アスキー)、『複雑系を超えて』(アスキー、共訳)、『古代文明の謎はどこまで解けたか I?III』(太田出版)、『懐疑論者の辞典(上下)』(楽工社、共訳)、『幻想の古代史(上下)』(楽工社)など。
登録情報
- 出版社 : 楽工社 (2011/12/15)
- 発売日 : 2011/12/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 313ページ
- ISBN-10 : 4903063526
- ISBN-13 : 978-4903063522
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 270,590位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 937位科学読み物 (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年12月14日に日本でレビュー済み
まだ、上巻しか読んでいない。
第1章「疑念の売り込み」ではタバコの有害説に「疑問」を呈することで対策を遅らせ、利益を確保しつづけたタバコ業界の「やり方」が描かれ、その手法が様々な問題で使われていたことを指摘している。さらに、上巻で具体的に触れられるのは、戦略防衛構想(SDI)、酸性雨、オゾンホールだが、そこでもその手法は踏襲されている。
地球全体の環境、複雑な要因が絡み合う人間の健康に関する科学的真実を100%の状態で確定することは難しいというかほぼ不可能に近いだろう。だから、そこに付け込んで「違うかもしれない」「違う考えがある」という形で意見を述べ、対策を遅らせていく。彼らはその被害が確定したとしても、科学的知見の限界の名のもとに責任を逃れ続けるだろう。だから書名にもあるように、「騙しつづける」のだ。
企業のように補償金や慰謝料などを請求されることもなく、自らの身を「安全圏」においているだけに質が悪い。
こんな科学者は、「歴史修正主義者」ならぬ「科学修正主義者」と名づけた方がいいだろう。
具体的に示された科学者たちの「騙しつづける」具体的な手法も興味深いが、レーガンの登場以降の共和党と1970年代の共和党では違った立場をとっていたことに関する指摘も興味深い。その代表は、229ページの、フォード大統領直属の環境諮問員会の委員長の「刑事被告人に適用される推定無罪は、不確実性のもとでの規制に関する判断にはふさわしくない」という言葉だろう。この考えが、地球温暖化・気候変動について取り入れられたら、対策がここまでぎりぎりになっていたとは思えない。
たまたまだが、本書を読み始める直前、水俣病患者の写真を撮影したユージン・スミスについて書かれた『魂を撮ろう』を読んでいるが、同書にも「騙しつづける科学者」が登場している。だから、こういった科学者は、アメリカだけではなく、日本にもいて、中立のふりして暗躍している。
第1章「疑念の売り込み」ではタバコの有害説に「疑問」を呈することで対策を遅らせ、利益を確保しつづけたタバコ業界の「やり方」が描かれ、その手法が様々な問題で使われていたことを指摘している。さらに、上巻で具体的に触れられるのは、戦略防衛構想(SDI)、酸性雨、オゾンホールだが、そこでもその手法は踏襲されている。
地球全体の環境、複雑な要因が絡み合う人間の健康に関する科学的真実を100%の状態で確定することは難しいというかほぼ不可能に近いだろう。だから、そこに付け込んで「違うかもしれない」「違う考えがある」という形で意見を述べ、対策を遅らせていく。彼らはその被害が確定したとしても、科学的知見の限界の名のもとに責任を逃れ続けるだろう。だから書名にもあるように、「騙しつづける」のだ。
企業のように補償金や慰謝料などを請求されることもなく、自らの身を「安全圏」においているだけに質が悪い。
こんな科学者は、「歴史修正主義者」ならぬ「科学修正主義者」と名づけた方がいいだろう。
具体的に示された科学者たちの「騙しつづける」具体的な手法も興味深いが、レーガンの登場以降の共和党と1970年代の共和党では違った立場をとっていたことに関する指摘も興味深い。その代表は、229ページの、フォード大統領直属の環境諮問員会の委員長の「刑事被告人に適用される推定無罪は、不確実性のもとでの規制に関する判断にはふさわしくない」という言葉だろう。この考えが、地球温暖化・気候変動について取り入れられたら、対策がここまでぎりぎりになっていたとは思えない。
たまたまだが、本書を読み始める直前、水俣病患者の写真を撮影したユージン・スミスについて書かれた『魂を撮ろう』を読んでいるが、同書にも「騙しつづける科学者」が登場している。だから、こういった科学者は、アメリカだけではなく、日本にもいて、中立のふりして暗躍している。
2015年12月21日に日本でレビュー済み
裏付けが非常につよい、歴史的研究に基づいている。残念ながら、ジャーナリストとの共著、そして日本語の翻訳のせいででもあるが、米国のエリートな大学の教授、評判が高い学者に似合わないセンセーショナルなトーン。
ただし、オレスケスが研究をしてきた否定論キャンペーンの裏話に関して、この本が執筆してから、多くの研究者やジャーナリストがさらに根拠になる情報を掘り起こしている。
明日香壽川他,2009,『地球温暖化 懐疑論批判』 サステイナビリティ学連携研究機構 [・・・]
Union of Concerned scientists
[・・・]
Scientific American
[・・・]
twitter で #exxonKnew #exxonDid
ただし、オレスケスが研究をしてきた否定論キャンペーンの裏話に関して、この本が執筆してから、多くの研究者やジャーナリストがさらに根拠になる情報を掘り起こしている。
明日香壽川他,2009,『地球温暖化 懐疑論批判』 サステイナビリティ学連携研究機構 [・・・]
Union of Concerned scientists
[・・・]
Scientific American
[・・・]
twitter で #exxonKnew #exxonDid
2012年2月16日に日本でレビュー済み
オレスケスはカリフォルニア大サンディエゴ校の科学史教授。隠れマルクス主義の絶滅危惧種。自分のイデオロギーと合わない学者を「御用学者」と呼ぶ。間接喫煙による肺がんの増加は、腺がんによるもので、タール発癌の扁平上皮癌とは関与遺伝子も発癌機構もまったく違う。地球温暖化論はすでに破綻している。原題は「懐疑の商人(Merchant of Doubt)」。真っ向からの反対論を唱えるのではなく、「その問題にはまだ疑問がある」と懐疑を呈する学者を指す。それをイデオロギーで一刀両断する立場から批判したもの。訳は拙劣。
2012年2月2日に日本でレビュー済み
アメリカ人は素晴らしい、お金儲けする方法を開発する能力は想像を絶している。
アメリカの世論それどころか世界中の世論を操作してしまえば天文学的な利益を生み出すことができる!
人々が戦争の恐怖を感じているときには、仮想敵国の脅威を訴えて防衛費を増やして業界に莫大な利益をもたらす。
タバコが健康に悪いことがわかるとそんなことはないという世論を作ってタバコメーカーの利益を守り自分たちはタバコメーカーから莫大な利益を得る。
人々が環境問題に敏感になると次々とありもしない環境問題を創りだして新しい利権を創りだす。
同じ環境問題でも資金力のある業界に不利益だとそんな問題は存在しないと世論を操作しようとする。
振り返ると日本のマスコミは政府から現金供与をうけて世論操作をしていたがどっちがより悪いだろうか。
アメリカの世論それどころか世界中の世論を操作してしまえば天文学的な利益を生み出すことができる!
人々が戦争の恐怖を感じているときには、仮想敵国の脅威を訴えて防衛費を増やして業界に莫大な利益をもたらす。
タバコが健康に悪いことがわかるとそんなことはないという世論を作ってタバコメーカーの利益を守り自分たちはタバコメーカーから莫大な利益を得る。
人々が環境問題に敏感になると次々とありもしない環境問題を創りだして新しい利権を創りだす。
同じ環境問題でも資金力のある業界に不利益だとそんな問題は存在しないと世論を操作しようとする。
振り返ると日本のマスコミは政府から現金供与をうけて世論操作をしていたがどっちがより悪いだろうか。
2012年6月2日に日本でレビュー済み
タバコによる健康被害、酸性雨・オゾンホールによる環境破壊など科学的見地が企業の利益や経済に強い影響をもたらすことがままあります。本書ではそれらを否定し、あるいは十分議論されていないなどとして対策を先送りするための手法が明らかにされています。これらの手法は今まさに日本で原発に対して行われているプロパガンダと共通する面が非常に多い印象を受けます。
科学は難しく、何かが完全に明らかになることは多くないといえましょう。これを利用して科学にマーケティングの手法を導入して、科学的真実が歪曲されたことが過去に何度もありました。本来経済活動による環境への影響は科学的事実に基づいて判断されるべきですが、科学的事実はもっぱら普通の人の目にすることのない専門雑誌などで発表されます。一方それらを否定する科学的でない主張は大量に発行される刊行物や、テレビなどによりはるかに多くの人々の目に触れることで、真実を覆い隠すことが現在でも行われています。また、最も効果的なプロパガンダは事業を進める(もしくはやめる)ことによる経済損失を過大に見積り、経済的恫喝をすることです。この手法は今まさに私たちが原発再稼働の是非で浴びせかけられています。
本書を読む限り、著名な科学者がしたコメントや政府が試算した経済的影響が信用できないことがわかります。それでは私たちは、何をもって判断することができるのでしょう。政府側に広くメディアで極端な論理を展開されてしまうと、それに対抗する側もプロパガンダ的な情報発信をせざるを得なくなり、最終的には発言者の人格攻撃が始まります。本書もその類に入ってしまうのでしょう。こうなると何を基準に判断をしたらいいのか分からなくなります。真実は明らかにならず、複数のメディアから入手した情報を総合して自らが信ずべき真実を選択しなければなくなります。私たちは結局、信じたいことを信じるしかないのでしょうか。
科学は難しく、何かが完全に明らかになることは多くないといえましょう。これを利用して科学にマーケティングの手法を導入して、科学的真実が歪曲されたことが過去に何度もありました。本来経済活動による環境への影響は科学的事実に基づいて判断されるべきですが、科学的事実はもっぱら普通の人の目にすることのない専門雑誌などで発表されます。一方それらを否定する科学的でない主張は大量に発行される刊行物や、テレビなどによりはるかに多くの人々の目に触れることで、真実を覆い隠すことが現在でも行われています。また、最も効果的なプロパガンダは事業を進める(もしくはやめる)ことによる経済損失を過大に見積り、経済的恫喝をすることです。この手法は今まさに私たちが原発再稼働の是非で浴びせかけられています。
本書を読む限り、著名な科学者がしたコメントや政府が試算した経済的影響が信用できないことがわかります。それでは私たちは、何をもって判断することができるのでしょう。政府側に広くメディアで極端な論理を展開されてしまうと、それに対抗する側もプロパガンダ的な情報発信をせざるを得なくなり、最終的には発言者の人格攻撃が始まります。本書もその類に入ってしまうのでしょう。こうなると何を基準に判断をしたらいいのか分からなくなります。真実は明らかにならず、複数のメディアから入手した情報を総合して自らが信ずべき真実を選択しなければなくなります。私たちは結局、信じたいことを信じるしかないのでしょうか。