75ページしかないリブレットなので、多くのことを期待するのが無理なのだろうが、ページ数が限られている（もともとシンポジウムの記録なので、時間が限られているといったほうが正確か）からこそ、ポイントを押さえて欲しかった。
ブッシュ政権を強く支持する「宗教右派」についての説明が、福音派、原理主義（根本主義）、ネオコンなどの説明ときっちり区別されていない点が、最も気になるところ。
また、ブッシュ政権の思想的支柱とも言える、福音主義や原理主義について検証する場に、アメリカの福音主義者（あるいは原理主義者）がパネリストとして招待されていないというのはいかがなものか。福音主義者（または原理主義者）抜きで、福音主義や原理主義について議論しても、空振りに終わる可能性もあるのでは？大学での研究所では、福音主義者や原理主義者も交えての研究がなされていることを祈ろう。
更に、せっかくキリスト教主義の大学主催のシンポジウムでありながら、聖書のレトリックが全く見られない議論になってしまっている点にはある種の絶望感を感じる。ブッシュ政権が聖書のレトリックを駆使するなら、こちらも聖書からの引用で対抗する必要があるのではないだろうか。聖書に言及しない普通の提言なら、無宗教の大学の研究所でも充分だ。
現在の日本におけるキリスト教主義の大学がどのようなスタンスを取っているのかを垣間見るには参考となるリブレットではある。
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