いやー、おもしろかった。
著者の論理は、シンプルで明快だ。
複雑怪奇に見えるこの世界を、シャープなメスで腑分けする(以下僕の勝手読み)。
'@近年、この世界を支配してきたのは、多極派(「資本の論理」)と米英軍産複合体(「帝国の論理」)というふたつのパワーだ。'Aいま多極派の勢いがいい。それがいま世界中が「多極化」している理由だ。'Bアメリカの一極支配が消え、中国を筆頭に次の勢力が台頭しているが、そのシナリオ自体も、実は「多極派」の演出だ。'C「資本の論理」(多極派)対「帝国の論理」という構図は日本にも及んでいる。「多極派」の鳩山・小沢らはアメリカ離れを意図し、日米中三角外交へと舵を切った(それがこの本のタイトル「対米従属を脱する」の意味だろう)。'D自民党はじめ外務省、官僚、マスコミらの「対米従属主義者」(「帝国の論理」)にとって、これは許し難い。戦後60年間続いた権力構造を根こそぎ崩されるから。――こんな具合に著者は世界と日本をぶった切る。
どの新聞雑誌・テレビを見てもわけのわからぬ解説(や単なるわめき)が横行する中で、田中宇の視点は、まさに快刀乱麻。ずばずばとベールに包まれた闇を切り裂く。著者の言うこがすべてが正論かどうか僕には分からないが、少なくとも構造図がほの見えた。
それにしても疑問がふたつ残った。'@日本の「対米従属主義者」は劣勢を挽回できるのだろうか。対立軸をちゃんと出せるのだろうか。あいつら、心許ないなあという印象が強い'Aあの小沢叩きは何だったのだろう? 田中角栄をやっつけた同じ手口だというメールが舞い込んできたが、ノンポリの僕にも、単なる政治資金規正法違反とは見えなかった。やはり検察を巻き込んだ権力闘争なのか――どうなのだろう?
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日本が「対米従属」を脱する日--多極化する新世界秩序の中で 単行本 – 2009/12/10
田中 宇
(著)
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- ISBN-104938939576
- ISBN-13978-4938939571
- 出版社風雲舎
- 発売日2009/12/10
- 言語日本語
- 本の長さ288ページ
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登録情報
- 出版社 : 風雲舎 (2009/12/10)
- 発売日 : 2009/12/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 288ページ
- ISBN-10 : 4938939576
- ISBN-13 : 978-4938939571
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2010年5月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
やはり背景に左翼がいる、米国も左と保守に分かれている、という観点で見ないと、この見方に絡めとられてしまいます。多極化も、米国以外のロシア、中国などが覇権国になるかのように書いてありますが、現実にはあり得ません。
2009年12月16日に日本でレビュー済み
著者は今から5年前、既に『アメリカ以後』という一冊を書かれている。
当時は今ほど日本の「アメリカ離れ」が問題として取り上げられてはいなかった。
その証拠に、2009年12月現在、未だこの本のレビューは私の一本に過ぎない。
あれから5年。
BRICsという言葉が流行る通り世界は多極化し、リーマンショック以降アメリカの覇権、
そして通貨ドルの価値が下落し続けている。
その根底に流れている原動力は「資本の論理」であると氏は解く。
資本家たちの欲得が、成長に限りあるG7を棄て、G20へと走らせているのだという。
その動きの中で、我が国も長く続く対米従属からの離脱に、静かに舵を切り始めた。
最近の民主党の中国を中心とするアジア重視や普天間を巡る騒動は、
その動きの数少ない「見える」兆候なのかもしれない。
「歴史が変わる時というのは、ファンファーレも鳴らない、
道頓堀に飛び込む者もいない。何も起きないと思った(283ページ)」
その通り、賽は既に投げられていたのだ。これから5年後、世界が、アメリカが、
そして我が国がどのようなスタンスにいるのか、垣間見える一冊である。
当時は今ほど日本の「アメリカ離れ」が問題として取り上げられてはいなかった。
その証拠に、2009年12月現在、未だこの本のレビューは私の一本に過ぎない。
あれから5年。
BRICsという言葉が流行る通り世界は多極化し、リーマンショック以降アメリカの覇権、
そして通貨ドルの価値が下落し続けている。
その根底に流れている原動力は「資本の論理」であると氏は解く。
資本家たちの欲得が、成長に限りあるG7を棄て、G20へと走らせているのだという。
その動きの中で、我が国も長く続く対米従属からの離脱に、静かに舵を切り始めた。
最近の民主党の中国を中心とするアジア重視や普天間を巡る騒動は、
その動きの数少ない「見える」兆候なのかもしれない。
「歴史が変わる時というのは、ファンファーレも鳴らない、
道頓堀に飛び込む者もいない。何も起きないと思った(283ページ)」
その通り、賽は既に投げられていたのだ。これから5年後、世界が、アメリカが、
そして我が国がどのようなスタンスにいるのか、垣間見える一冊である。
2010年11月3日に日本でレビュー済み
著者の世界情勢の見方は非常に斬新であり、納得の行くところもある。私は著者の予測を楽観的に受け止められない。とはいっても、世界を常に1つの切り口で見ることや、1つのイデオロギー的に縛られることは危険なので、著者の本を読んでいる。
著者の切り口は、ユダヤ右派のイスラエル+英米軍産複合体と金融中心主義ユダヤ人+米国多極主義者の争いである。現在は多極主義者が強まりつつある時期で、この流れに乗れば日本は対米従属から脱することができるという。
戦争で儲けたいユダヤ右派に対して、多極主義者は米国の覇権など知った事ではない。カネ儲けがしたいので、世界中のあちこちで経済成長が起こることを目標にしている。今はオバマがその役割を担わされている。率先して各国との関係改善をしているのは、地域紛争はその地域の大国が面倒をみる責任をいろんな国に押し付けるため、という。
東アジアの大国は当然、中国である。日本民主党の東アジア共同体はその延長上にあり、米国の意向を組んだ小沢一郎や鳩山元総理はそのシナリオ通りに動いただけという。米国が強気に出て、沖縄で反米感情が盛り上がり、米軍が出て行く。分権により沖縄が独立する。そのためにわざと米国は強気に、民主党はのらりくらりとしているという。
本当だとしても、民主党でそのことを分かっているのは一部であろうし、日本の右派・財務省・官僚は、支那による日本支配、沖縄独立、地方分権による官僚弱体化を望まないだろう。私も支那による日本支配は望まない。
さらに、この構想は中国すら実は嫌がっているという。核廃絶と地方分権と地域統合がワンセットのこの政策は、中国の核放棄、分裂または民主主義の導入、近隣諸国の紛争処理の責任を中国に課すからだ。
しかし、現在の民主党を批判して旧来の自民党を復活させれば、日本は米国の属国のままである。親米ポチ保守が復活しても多極主義者には袖にされるだけなのだ。この情勢を乗り切る覚悟が国民に求められている。
著者の切り口は、ユダヤ右派のイスラエル+英米軍産複合体と金融中心主義ユダヤ人+米国多極主義者の争いである。現在は多極主義者が強まりつつある時期で、この流れに乗れば日本は対米従属から脱することができるという。
戦争で儲けたいユダヤ右派に対して、多極主義者は米国の覇権など知った事ではない。カネ儲けがしたいので、世界中のあちこちで経済成長が起こることを目標にしている。今はオバマがその役割を担わされている。率先して各国との関係改善をしているのは、地域紛争はその地域の大国が面倒をみる責任をいろんな国に押し付けるため、という。
東アジアの大国は当然、中国である。日本民主党の東アジア共同体はその延長上にあり、米国の意向を組んだ小沢一郎や鳩山元総理はそのシナリオ通りに動いただけという。米国が強気に出て、沖縄で反米感情が盛り上がり、米軍が出て行く。分権により沖縄が独立する。そのためにわざと米国は強気に、民主党はのらりくらりとしているという。
本当だとしても、民主党でそのことを分かっているのは一部であろうし、日本の右派・財務省・官僚は、支那による日本支配、沖縄独立、地方分権による官僚弱体化を望まないだろう。私も支那による日本支配は望まない。
さらに、この構想は中国すら実は嫌がっているという。核廃絶と地方分権と地域統合がワンセットのこの政策は、中国の核放棄、分裂または民主主義の導入、近隣諸国の紛争処理の責任を中国に課すからだ。
しかし、現在の民主党を批判して旧来の自民党を復活させれば、日本は米国の属国のままである。親米ポチ保守が復活しても多極主義者には袖にされるだけなのだ。この情勢を乗り切る覚悟が国民に求められている。
2010年2月7日に日本でレビュー済み
国際政治外交はルールのない駆け引きで誰が何を望んで何をしているかはとてもわかりにくい。
そしてその結果はすべての人に影響を与える。
それにもかかわらず我々はそのことにひどく無頓着で自分に関係ないと思っている。
米軍基地問題のように日本人にとってとても大事なことにしても表面的なことしか知らないためにマスコミの言っていたことが自分の意見になってる。
ちょと考えればおかしなことはたくさんあるのに。例えば普天間基地はなんで必要なの?なくても誰も困らないじゃん(米軍だってたぶん困らない)とか。
日本に米軍基地がないとだめだという考えはどうしてそう思うのか考えるとマスコミがそう言ってるからとしか理由を思いつかない。
なんにしろ日本のマスコミがいかにだめかを実感してしまいます。
マスコミって何のためにあるのだろうか。今の日本のマスコミはプロパガンダ機関になってしまったけど、この本の作者のような人がいてくれるならまだ大丈夫なんだろうと思いたい。
そしてその結果はすべての人に影響を与える。
それにもかかわらず我々はそのことにひどく無頓着で自分に関係ないと思っている。
米軍基地問題のように日本人にとってとても大事なことにしても表面的なことしか知らないためにマスコミの言っていたことが自分の意見になってる。
ちょと考えればおかしなことはたくさんあるのに。例えば普天間基地はなんで必要なの?なくても誰も困らないじゃん(米軍だってたぶん困らない)とか。
日本に米軍基地がないとだめだという考えはどうしてそう思うのか考えるとマスコミがそう言ってるからとしか理由を思いつかない。
なんにしろ日本のマスコミがいかにだめかを実感してしまいます。
マスコミって何のためにあるのだろうか。今の日本のマスコミはプロパガンダ機関になってしまったけど、この本の作者のような人がいてくれるならまだ大丈夫なんだろうと思いたい。
2010年1月13日に日本でレビュー済み
「もし日本のマスコミがちゃんと答えてくれるんだったら、僕はまだ楽しく読者をやっていますよ」と本書のインタビューで語っているように、著者は、マスコミ記事で読んでもわからない部分を、世界に出回っている大量の英文情報を詳細に読むことで、自分なりに理解しようとしてきた人物である。そうして得た自分なりの分析結果と論拠とした英文情報をネット上(「田中宇の国際ニュース解説」)に無料で配信することを14年も続けてきた。著者の記事のおかげで溜飲が下がる思いを何度も経験したし、おそらく同じ思いの読者が大勢いるのだと思う。18万人という配信読者数がそれを示している。
本書は08年リーマンショック以後の分析を読みやすくまとめたのもで、私たちがいま、歴史の大きな分岐点に立たされていることを伝えている。日本が、世界が「対米従属」を脱するとは何なのか。またアメリカもそれを望んでいるとはどういうことなのか。流行りの幕末以上に大きな変化の中にいることを知ると、もっと面白くこの時代を生きることができると思う。
ドル崩壊を予測した彼に民主党関係者がコンタクトをとってきたそうだが、アメリカの特定の機関が情報源でないことを知ると、二度と連絡をしてこなかったそうだ。「独自」に情報収集したことのほうがはるかに重要だと思うが。日本のマスコミが伝えていない今日を知りたい人には必読の一冊である。
本書は08年リーマンショック以後の分析を読みやすくまとめたのもで、私たちがいま、歴史の大きな分岐点に立たされていることを伝えている。日本が、世界が「対米従属」を脱するとは何なのか。またアメリカもそれを望んでいるとはどういうことなのか。流行りの幕末以上に大きな変化の中にいることを知ると、もっと面白くこの時代を生きることができると思う。
ドル崩壊を予測した彼に民主党関係者がコンタクトをとってきたそうだが、アメリカの特定の機関が情報源でないことを知ると、二度と連絡をしてこなかったそうだ。「独自」に情報収集したことのほうがはるかに重要だと思うが。日本のマスコミが伝えていない今日を知りたい人には必読の一冊である。
2009年12月30日に日本でレビュー済み
対米追従からの離脱は日本の国益にかなっているという著者の論理は、コントロールされた日本のマスメディアを主な情報源としている一般の方には俄かに受け入れ難い少数意見ととられるでしょう。しかしながら海外メディアをチェックしていると、日本では常識となっていることすら海外では非常識となっていることが少なくありません。最近の例では、クライメートゲート事件があげられますが、この事件をまともに報じたマスメディアがあったでしょうか?ネットを丹念に検索していくと、辛うじていくらかの情報が手に入る位です。
日本人もそろそろ朝日新聞、NHKに毎日の貴重な時間を費やすのは、あまり効率いい習慣ではないことに気付いてもいいころなのではないでしょうか。著者の意見がマスメディアに取り上げられないという理由からキワモノ扱いすることは周りから失笑を買うような自由闊達な意見交換ができる日本に成長することを願ってやみません。
日本人もそろそろ朝日新聞、NHKに毎日の貴重な時間を費やすのは、あまり効率いい習慣ではないことに気付いてもいいころなのではないでしょうか。著者の意見がマスメディアに取り上げられないという理由からキワモノ扱いすることは周りから失笑を買うような自由闊達な意見交換ができる日本に成長することを願ってやみません。
2010年1月17日に日本でレビュー済み
昨年政治経済にトーク番組を見ていた時、鳩山総理の普天間問題に関する八方美人的な発言の数々に、民主党系の出演者が、別の討論者に付け込まれ、「国民も日米同盟に対する関心を強くしたのでは」との軽い返答(ジョーク?)に失笑をかった場面があった。日米同盟、アメリカ追随は日本の国是と感じている方にとって、あまりに幼稚なバカな話をするなと思っただろう。しかしながら田中宇氏の本書を読むと、巷で流れるマスコミ各誌の論評とあまりにかけはなれる政治、経済の記事に唖然としてしまう。
但し、以前ならアウトサイダー的な人物として失笑されたかもしれないが、今となっては非常に興味をよせる部分が多い。世界政治の力学が変わろうとしていることは間違いない事実であり、今後G8からG20へその流れは加速するだろう。米国周辺にある多極派と軍産複合体の争いは、今後の日本の針路を占い上でも非常に重要なところであり、昨年民主党政権に政権交代して、ぽっとでたような普天間問題が、逆に今後の日本の針路を組めることになるであろうという田中氏の解説には説得力があるし、今後の政治動向を注視したい。それと非常に大事な部分であると思うが、今回の普天間、日米同盟の今後の展開は、一昨年起こった米国のサブプライム金融問題の事の重大さが発端になったもの、しいては米国の覇権が、ドルの基軸通貨の信頼が消滅、弱まることから起こったものと述べている。田中氏は、副島隆彦氏と同様に米国はサブプライム金融の問題で、すくなくともここ数年で大変な経済苦境に立たされるとも語っている。国内の新聞各紙では今年の秋頃以降には我国含め米国、世界経済も回復との楽観記事が多く占めている。但し、昨年米国で行った金融機関に対する不良債権試算のストレステストがあまりにいい加減であったこと、商業用不動産を含めた金融機関の天文学的な不良資産の問題、FRBの財務内容の問題、米国の失業率、個人消費の低迷など、まだまだ米国の経済回復には大きな疑問を感じるはずである。日本の景気回復は当面、中国の内需だのみとならざるをえないであろうが、今年は米国の今後が日本の今年一年に占める影響が強いであろうと本書を読んで、なおさら時間した。歴史が変わる時は、ファンファーレはならないものであろう。
但し、以前ならアウトサイダー的な人物として失笑されたかもしれないが、今となっては非常に興味をよせる部分が多い。世界政治の力学が変わろうとしていることは間違いない事実であり、今後G8からG20へその流れは加速するだろう。米国周辺にある多極派と軍産複合体の争いは、今後の日本の針路を占い上でも非常に重要なところであり、昨年民主党政権に政権交代して、ぽっとでたような普天間問題が、逆に今後の日本の針路を組めることになるであろうという田中氏の解説には説得力があるし、今後の政治動向を注視したい。それと非常に大事な部分であると思うが、今回の普天間、日米同盟の今後の展開は、一昨年起こった米国のサブプライム金融問題の事の重大さが発端になったもの、しいては米国の覇権が、ドルの基軸通貨の信頼が消滅、弱まることから起こったものと述べている。田中氏は、副島隆彦氏と同様に米国はサブプライム金融の問題で、すくなくともここ数年で大変な経済苦境に立たされるとも語っている。国内の新聞各紙では今年の秋頃以降には我国含め米国、世界経済も回復との楽観記事が多く占めている。但し、昨年米国で行った金融機関に対する不良債権試算のストレステストがあまりにいい加減であったこと、商業用不動産を含めた金融機関の天文学的な不良資産の問題、FRBの財務内容の問題、米国の失業率、個人消費の低迷など、まだまだ米国の経済回復には大きな疑問を感じるはずである。日本の景気回復は当面、中国の内需だのみとならざるをえないであろうが、今年は米国の今後が日本の今年一年に占める影響が強いであろうと本書を読んで、なおさら時間した。歴史が変わる時は、ファンファーレはならないものであろう。